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昼食3
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それから立山先輩はお昼休みギリギリまで保健室にいて一緒に喋った。遥先生は具合の悪い生徒の対応に追われていたから、途中で抜けてしまったけど。
名残惜しくも予鈴が鳴って、先輩が立ち上がる。
そこで、楽しかった時間からハッと現実に戻った。
そうだよね、先輩はきちんと教室で授業を受けるんだよね。教室に行けない僕と違って。
「じゃあ、俺は5限行くけど。なんかあったら2年A組まで来い、絶対遠慮すんなよ?」
「わ、わかりました。ありがとうございます」
先輩、僕と同じA組なんだと思うと同時に、先輩が行ってしまうことが少し寂しく感じられた。
なんで寂しいんだろう。今までずっと1人か、たまに遥先生と2人だったのに。元に戻っただけなのに。
本鈴が鳴って5限が始まると、また遥先生と2人きりになった。
「どうしたの郡山くん、浮かない顔して」
「えっと、僕、そんな顔してました?」
うん、と先生は微笑む。
「もしかして、ナツがいなくなって寂しくなっちゃったのかな?」
「えっ、あの、え、どうして」
どうして先生にはいつもバレてしまうんだろう。まるで、僕の心の中が透明みたい。
「…ぼ、僕、嬉しかったんです、本当に。だって、僕にはもう」
「もう?」
「こ、こんな風に休み時間話したりできる友達なんて、できないと思ってたから。高校3年間、僕には友達なんて」
言いながら泣きそうになる。
だって、本当に嬉しかったんだ。
あの教室にいると、本当の自分を出せない。出しても笑われてしまう。
大好きな料理のことも、大好きなお母さんのことも、大好きな小説のことも、全部全部全部笑われた。
でも、どんなにバカにされて悔しくても、僕も一緒に笑うしかなかった。それが友達間のいわゆる「ノリ」というやつだから。「ノリ」が悪いやつは、友達の輪から外されてしまう。
だけど、立山先輩は笑わなかった。
すげーじゃんって、褒めてくれた。
立山先輩と喋ってる時は、心の底から笑顔になれた。
「僕はずっと、立山先輩みたいに、安心して好きなことを好きって言える友達がほしかったんです。部活では怖いところもあるかもしれないけど、僕は先輩が大好きになりました」
「そっか、それは良かった。ナツもきっと郡山くんと友達になれて嬉しかったと思うよ」
「はい。あ、けど一応友達じゃなくて恋人でした」
「そう言えばそうだったね」
付き合うって、こんなに胸がポカポカするものだったんだ。
別に立山先輩のことが恋愛的な意味で好きなわけじゃない。だけど、このまま友達のような関係でいられるなら、ずっと先輩と付き合っていたいとさえ思った。
立山先輩と付き合って、良かった。
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