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すれ違い5
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昼休みになっていつも通り2Aに行くと、久しぶりに見る立山先輩がいた。
前の授業のノートが間に合わなかったのか、必死に黒板を写している姿が一生懸命でちょっと可愛い。
ダメだ。ここできゅうって胸が苦しくなっちゃ、ダメ。僕の恋はもう終わったんだよ。
そう言い聞かせて、笑顔を作って、こんにちはといつも通り教室に入ろうとした、その時。
「夏彦先輩!」
「あぁ、森川」
ズキン。
部活終わりの帰り道にしか現れなかった森川くんが、僕がいてもいいよと認められたA組に来た。僕の大切な居場所に。
どうして、来るの。森川くんは普通に教室でみんなと昼ごはん食べられるんでしょ。どうして、僕の居場所をこうやって順番に奪っていくの。
いいや、こんなこと思っちゃダメだ。
だって、立山先輩と森川くんは付き合っていて、だから立山先輩の場所は森川くんの場所にもなるんだ。きっと。
「先輩はやく行きましょ」
「そ、そうだな」
行かないで。行かないで立山先輩。
止めたくなるのを必死に抑える。僕は立山先輩の幸せを祝うって決めたんだから、ここで泣いちゃダメ。
「郡山、ごめんな」
「えっ?」
先輩が僕の横を通り過ぎる一瞬、小さな小さな声でそう聞こえて、手が触れ合った。
振り返った時にはもう先輩は森川くんと手を組んで歩き出していて、もう一度その言葉を聞くことはできなかったけど。
だけど先輩は確かに、僕の名前を呼んで僕の手を握った。本当に一瞬のことだったけど。
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