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見立てデート3
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遊園地に入ってそうそう、僕と大志は争っていた。
「ジェットコースター!」
「だめ!コーヒーカップ!」
「んならお化け屋敷!」
「もっとだめ!あ、あそこ行こうよ」
指差した先は、船に乗って色んなものを見て回るアトラクションだった。
「はぁ?子どもしかいないってあれ」
「でもっ、でも面白いんだもん!」
「遥はお子ちゃまですねぇ」
大志がバカにするように笑う。
もう、立山先輩なら絶対笑わないのに。僕が好きなものを先輩は笑ったりしない。
…って、だめだよ、立山先輩のこと考えちゃ。
今は大志と遊んでるんだから。
先輩のことは忘れようって、決めたんだから。
「大志のばかー!ばか大志。あほ大志」
先輩を頭の中から振り払うように、大志の体をぽこぽこ叩いた。
「全然痛くありませぇん。なに、その可愛い攻撃。いくらでも受けられるんですけど」
大志は挑発的に両腕を広げてわざと無防備な体制になった。
「バカにしてる!大志、絶対に僕のことバカにしてるー!もう大志なんか嫌いっ」
「ごめんって。可愛い遥さーん、機嫌直してくださーい」
「その、可愛いってのはバカにされてるように感じるからだめ。やり直し」
本気で怒ったふりをして、ぷいと背を向けた。
「はーるか。こっち向いて」
なんて言いながら、無理やり僕を正面に向けさせて。
そして、額にふにっと柔らかいものがあたった。
「えっ、た、たいしっ」
「わり。でもおでこだから許して。こっちも好きな子とデートできて舞い上がってんだよ」
その好きな子というのは自分を指しているんだと分かって、体の中の温度が急上昇する。大志に触れられた額は特に熱を持っていて、嫌でも自分は大志のことを意識しているんだと分かる。
こんな風に口説かれることって今までなかったから、しかも大志って立山先輩には劣るかもしれないけど背が高くてかっこいいから、なんで僕なんかがって不思議な気持ち。
だけど、同時にこんなことも思ってしまう。
これが立山先輩だったら、きっと、天にも舞うような気持ちなんだろうなぁって。
おでこにキスなんて、そんな贅沢なこと言わない。
2人で遊園地に行って思い出を作れたら、僕はその1日だけでとても強くなれる気がする。
こんなことを思うくらいなら、付き合ってた時にもっとデートをしておけばよかった。
デート練習しますよって、図々しく言えばよかった。
先輩とのささやかで幸せな日々は、もう戻らない。
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