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― ep.1 ―(1)
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初めて「その人」を見たのは、
入学式へ向かう電車の中、
降りる駅の名前が間違っていないことを確認したくて、
停車する少し前から窓に張り付いてホームを見ていた時だった。
初日からの遅刻を恐れてやたらと早く登校したため、
学校の最寄り駅にも、同じ制服の学生の姿はまだほとんど見られなかった。
――この駅で合ってるんだよな…?
若干の不安を覚えつつ、窓から見える限りのホーム内を注意深く覗う。
「(………
………
…! 居た! 同じ学校の制服の人達だ!)」
何とかそれらしい集団を発見することができ、ひとまず安心した。
ここから見える限りでは人数は5~6人ぐらい。
あの感じは恐らく新入生ではなさそうなので、きっと上級生達だろう。
…全員男子なのは、男子校なんだから当たり前として。
「(よっし! 俺も降りよう)」
そう思い、満員電車からやっとのことで勝ち取って20分程死守してきた席を立ち、
勢い良くドアの方へ飛び出そうとした、
その瞬間…――
「…――」
俺の目は、席を立ってすぐに、また窓の方に釘付けになってしまった。
同じ色の学生服、同じ色の通学カバン、そして同じような髪色の男子グループの中、
一人だけ、その中心で異彩を放っている人が居たんだ。
「――…」
まず、一際目立つ髪色をしているのは、
一応校則の範囲内だし、この辺りではそんなに珍しいことでもなさそうなので、
それほどの重大要素ではない。
始業式早々制服を着崩した何ともチャラそうな出で立ちも、
こんな遠くの窓から注目するほどの大した見世物ではない。
でも――
そういった、
普段の俺だったらどちらかというと苦手だと思ってしまうような独特の華やかさが、
「その人」の、仲間達に向ける弾けんばかりの無邪気な笑顔に彩られた瞬間。
俺の目には――少なくとも俺の目には本当にかつて見た事のないほどの――、
とてつもなく美しい何かを見たような衝撃が走ったのだ。
――何だ…? 誰だ、あの人は……?
そして気づいたら、
………電車のドアが閉まった。
俺が立ち上がった瞬間に凄い俊敏さで空いた席に滑り込んだおばさんが、
あなたここで降りないの?という顔で俺をじっと見ている…。
遅刻を恐れてやたらと早い時間に出て来たから、
1 駅乗り過ごしたって別に困りはしなかったけれども。
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