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― ep.1 ―(5)
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◆◇◆◇◆
さて、そんな1日もあと残るは部活だけという時間になった。
朝の電車で天ちゃんから聞いた諸々のことはやっぱりまだ気になるけれど、
それよりも俺は、これから向かう美術部の2回目の活動に
とてもワクワクしていたので、ある程度まで頭は切り替えられていた。
中学でも美術部には所属していた。
そこは結構な大所帯で、
大半の部員が美術系の高校を目指して真剣に絵を学ぼうとしている奴らだった。
顧問の先生が毎日のように指導に来ていたし、
歴代の部長も後輩の教育に熱心な人が選ばれていて、
何というか、
クラブ活動というよりも授業の後に授業を受けに行っているような感覚だった。
吹奏楽部ほどではないけれど、
文化部の中ではかなりきっちりした部だったと思う。
だから正直なところ、大部分の美術科受験組の奴らは満足していても、
少数派にあたる、趣味で絵を描いている部員達は、
かなり肩身が狭く息苦しい思いをしていたんだ。
そして俺は後者。
後者の仲間連中はすぐに退部する奴が多かったので、
ただでさえ少ないところからどんどん人数も割合も減ってゆき、
最終的にこの「趣味チーム」で3年間退部せずやり切ったのは、
なんと俺1人だった。
もうここまで来たら俺もプロを目指した方がいいのではないかと思ったが、
やっぱり何度考えても俺にとって絵は趣味だ。
退部しなかった根性は確かにアーティストに向いている素養のひとつだけれど、
まず一番大事な才能と技術が俺にはないし。
ただ絵が好きな人達と好きな気持ちを共有できる場所が欲しいだけだった。
…できればもう少し気楽な場所なら言うことなし。
そう思っていたところに、
この学校の美術部はまさに理想中の理想だった!
超少人数で部員は5人。
新任の顧問の先生はほとんど部室に顔も出さない。
部長の肩書なんてどうでもいいと言っている共産主義の部長。
この自由な環境の中で各々がそれぞれやりたいことをやるのが、
この学校の美術部なんだそうだ。
昨日は顔合わせの後に、
「せっかくだから今日はみんなでデッサンやろうよ~」という部長の指令によって、
全員で真面目に石膏デッサンをしたので、一応部活らしい時間を過ごした。
それはそれでとても楽しかったんだけど、
今日はいよいよこの部の一番ノーマルモードな姿を見ることができる。
一部を除いてとてもアットホームで温かかった新しい美術部は、
きっと俺にとって最高の居場所になるに違いない!
必要な道具は全部準備室に置きっぱなしが許可されているので、
帰り支度だけして行けば、他には何も持たずに直行直帰ができる。
俺は通学鞄とペットボトルのお茶だけ持つと、
同行者に声をかけるため、教室の一番後ろの隅っこの席へと向かった。
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