アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
― ep.2 ―(4)
-
◇◇◇◇◇
「………」
そんな強烈な出会いだったから、どうしてもこの人には苦手意識が働いてしまう。
「(でも……やっぱり上手いよなぁ…)」
キャンバスの上に、どんどん色が重なってゆく。
…ずっと見ていられそうだ。
俺は昔から、延々と塗り重ねられてゆく油彩を見ているのが好きだった。
このままいったら立体になっちゃうんじゃないの?ってところまでいっちゃうぐらいがいい。
自分がやらないものだから、端から見ていて面白いというのもあるかもしれない。
「――何か?」
「………
………
…! は、はいっ?!」
突然、絵のような顔がクルッとこっちを向いた。
びっくりした!
…チラ見するだけのつもりだったのに、ついまじまじと見すぎてしまったからだ。
やばい……絶対怒られる。
「す、すみません! 失礼しました!」
「何かあるのかと訊いているんだが」
…ゆ、許してくれなそう。
離れたところで亜稀がビビって泣きそうになっている。
……おまえは怖がりすぎだろ。こっちまで伝染するからやめてほしい…。
「い、いえ…その……」
「…?
何だ、何もないのか?」
「………
へ?」
「僕に何か用があるのなら聞いてやろうと思って手を止めたのに。
何もないなら紛らわしいことをしないでもらいたい」
そう言うと絵のような顔はクルッとキャンバスの方へ向き直り、
阿部先輩は何事もなかったように即刻作業を再開した。
「(えぇぇ~っ?)」
俺と亜稀がポカンと顔を見合わせていると、
一部始終を見物していた部長達が「もう堪えられない」と言わんばかりに盛大に吹き出した。
「お前、紛らわしいのはどっちだよ!」
「ごめんね椎崎くん。
この子ぜんぜん悪気ないんだよ〜。
新入生に親切にしてあげようとしてただけだったの」
爆笑している部長達を、阿部先輩は少しきょとんとした顔で見つめている。
その様子を見て亜稀も、安心した顔でクスクス笑い出した。
そして俺も笑っていた。
みんなでひとしきり笑い合ったら、
ちょいちょい雑談を挟みながら各々のやりたい作業をやりたいようにやる。
そうこうしているうちに、あっという間に時間は過ぎて、もう解散の頃合いになった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
12 / 36