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― ep.4 ―(1)
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自分の部屋のように落ち着く場所でくつろいでいた。
ここの主は席を外しているので、今のうちに急いで“探し物”に取りかかる。
……おっ。予想的中。
ソレは、最初に手を伸ばした場所にしっかりあった。
引っ張り出しながら考えるのは、――また、こんなことだ。
俺は、このごに及んでまだ認めきれずにいるんだ。
こんなこと、普通じゃないじゃないか、って…。
よりによってこんな……誰よりも普通だと思って生きてきた俺が、実は普通じゃなかったなんて……?
(…でも、「普通」って……何だ?)
女の子を好きになることが「普通」?
男の人には特別な感情を抱かないことが「普通」…?
俺があの人に抱いている感情は、何…?
特別なのは間違いない。
あんなに強くて、激しい感情を……特別だといえないわけがない。
でも、きっとこんなことは、クラスの誰も…周りの誰も経験していない。
やっぱりこんなの、俺だけだ……。
「おい、コーラなかったからポカリ……ってああああああっ!!?」
そこでちょうどドアが開き、部屋の主が戻ってきた。
戻って早々、凄まじい声で絶叫している。
「お前っ、何勝手にそんなもんっっ!!」
「天ちゃんのことだから、きっとベタにベッドの下にでも入れてるんだろうなって思ったらホントに入ってた」
「……ったく、ちゃんと元の場所に戻しとけよ?」
「場所は変えた方がいいと思うけど…」
天ちゃんは、おやつのトレーを畳に直置きすると、どこか心配そうな顔で問いかけてきた。
「お前、なんでそんな険しい顔でそんなもん見てるんだ?
絶対そんな顔で見るもんじゃないだろ」
「………」
「……
確認なんかしたって、わからないと思うぞ?」
「――」
…あーあ。やっぱりこのお兄ちゃんには最初から見透かされていたんだ。
でも、だとしたら天ちゃんは、今の俺のことをどう思っているんだろう?
気持ち悪いとか、普通じゃないとか……
そんなふうには思わないのだろうか……?
「たまにはポカリもいいなー」なんて呟きながらスナック菓子をポイポイと口に放り込むその様は、もう既にこの話からは切り替えられてしまっているようだ。
何とも思ってなさそう。
そうとしか見えない…。
「………」
いっそ相談してしまおうか?
それともこのまま流してもらったほうがいいのだろうか?
そんなことを考えていたら、――天ちゃんの方から意外な話が持ちかけられた。
「なあ汐海、阿部って部活ではどんな感じなんだ?」
「へ?」
今ここで出てくるとは思っていなかった名前を聞いて、思わず訊き返してしまった。
「どんな感じって…?」
一瞬、さっきの流れの続きなのかな、とも思った。
いま俺が誰のことを考えているのかわかったから、その人とそういう関係にある(と、言われているだけ。まだ確証はない!)人物の名前が上がってきたのかな?、と……。
でも、続きを聞いていると……どうやらそういうことでもなさそうで。
「あいつ面白ぇよなぁ」
「……え? お、面白い!?」
阿部先輩が!?
よりによって一番似つかわしくない形容詞が出てきたもんだから、つい素っ頓狂な声を上げてしまった。
「絵描いてんのは知ってるけど、実際描いてるところを見たこともないからさ。
なぁ、アイツどんな顔して描いてんの?」
そう言って俺の顔を覗きこんでくる天ちゃんの目はやたらとキラキラしてて…
……すっごく興味津々って感じなんだ。
俺は「ない知識を振り絞る」という経験をこんなところですることになるとは思わなかったけれど、仕方がないので自分にできる精一杯の返事をした。
「真剣な顔。
俺達がどんなに騒がしくはしゃぎ回ってても、顔色ひとつ変えないでいる」
「ハハハッ! やっぱりそうか!
ホントアイツ最高だわ。絶対に期待を裏切らないでくれるんだよな~」
「???」
想像通りだったのがそんなに面白いのだろうか…?
今日の天ちゃんは何だかよくわからないなぁと思いつつも、俺はとにかく自分のことで手一杯だったので、あまり深くは気にせずスナック菓子の袋に手を伸ばしていた。
「…あ。天ちゃんこれ全部食べていいよ」
「あ? 何で?」
「ポカリと合わなくて美味しくない」
◆◇◆◇◆
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