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― ep.4 ―(3)
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◆◇◆◇◆
...【side change】
不思議な感覚だった。
こうして砂原先輩と一緒に居る時間を、一分ずつ、一秒ずつと重ねるたび、自分の中での戸惑いが…大きくなっていくようでもあり小さくなっていくようでもあったから。
「やっぱさー、しーくんって見た目だけで言ったら絶対モテそうだと思うんだよ。
ナンデ彼女いないの??」
「えー…と…、あぁ、天ちゃんにはよくヘタレだからだって言われます。
いや、見た目だってモテそうなんて言われるのはおこがましいですけど」
「ヘタレかぁ〜。それじゃしょうがないねぇ!」
「あ、ちょっとひどい…」
先輩が俺の名前を呼んで、俺の目を見て、…俺も先輩を見て、二人の視線がちゃんと合わさって、言葉を交わして。
その時間が一秒ずつ増えていくたびに、未だしぶとく認められずにいることが、だんだん薄くなって姿を消してしまいそうになっていく。
それが……恐れていたことでもありながら、逆に葛藤から解放される安堵感でもあるようで――。
どうしたらいいかわからなくなる。
知り合える前だって、いつも遠くから、彼の姿には時間を忘れて見惚れていた。
けれど今…――
目の前に居る彼の、陽光に透けてさらさらと輝く金茶の髪が。
高くも低くもない、あまり癖のないよく通る涼し気な声が。
映るものによって少しずつ色を変える、どこか夢見がちなアーモンド型の眼が。
彼の持つ何もかもが、こんなにも綺麗だと思ってしまう。
そして、自分の視線がうっかり彼の唇や首筋やシャツの襟から僅かに覗く胸元などにいってしまった時に、慌てて目を逸らすという行動を取っていることに気づいた時には、もう殆ど観念の域に入っていた。
…俺はもう、この人のことを普通の目では見れていない。
俺が1人でこんな気持ちになっていることを、先輩本人に気づかれてはいないだろうか?
…俺は必死に何でもない顔をして、出来る限り余計な考えを取り払って、目の前の会話に全力を注ぐことに挑戦した。
「俺なんかより、砂原先輩の方がよっぽどモテそうじゃないですか。
共学に行ってたら絶対女子達が黙ってなかったですよ。中学だってそうだったんじゃないですか?」
自分の気持ちを鎮めるために会話に集中しようと思ったのだけれど、今話している内容は何気に結構気になっていることだったので、思いの外そちらの方に気を紛れさせることができた。
「……おや。そう見える?
…フッフッフ。残念だけど、俺はみちると違って期待を裏切るのが大得意な男なんだよ」
「???」
それはどういう意味だろうと、思わず砂原先輩をじっと見つめていると……
一瞬前までいつも通り真剣にキャンバスに向かっていたはずの阿部先輩が、急に顔を上げると同時に、砂原先輩を俺どころではないほどじっと見つめた。
あれ?と思った。
少し離れたところで亜稀も、同じように「あれ?」という顔をしていた。
阿部先輩は相変わらず感情の読めない表情で、しかし何かとても不穏な眼差しで砂原先輩を見つめている。
――何かある。
俺も亜稀も、ほとんど直感でそう思った。
その直感が正しかったことは、この直後に砂原先輩の口から発せられた言葉によって証明された。
「あのね、女子なんか寄って来ないよ。
――俺、ゲイだから」
「――へ?」
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