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― ep.5 ―(3)
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意外といえば意外だった。
正直なところ、この告白自体はもともと成功するとは思っていなくて、ただ気持ちを伝えたいという一心で決意したことだったけれど……。
でもそれは、まず勿論、自分が男であることと、それから、砂原先輩はきっとすごくモテるだろうから。
男性であっても女性であっても、俺なんかよりもずっとずっと魅力的な人達にたくさん言い寄られているだろうから、俺なんて眼中にないだろうと、そういう意味での当たって砕けろの気持ちで挑んでいたんだ。
なのに少し予想外な話を聞いて、いやそんなことはないでしょうと思う反面、少しだけ…確かにそうなのかもと思える気がしていたから、何だかとても複雑な心境だった。
いつだったか天ちゃんから聞かせてもらった砂原先輩の印象。
明るくて誰とでも仲良くなって、周りを楽しませるのが得意で、みんな彼のことが好きで……
――その実誰も、彼のことをよく知らない。
そんな砂原先輩だから、友達にはなりたくてもそれ以上に深入りはしたくないという人が多いのも、実際納得がいく。
…そこに彼自身が気付いているというのが、何だか少し、心が痛むのだけれど。
でも、それを意外と思うか納得と思うかは俺にとってはどうでもいいことだった。
俺が先輩に抱いている気持ちは、もう何度も、気が遠くなるほど何度も自分自身で確認した。
友達とか、憧れの先輩とか、そんなものじゃない。
たとえ変わっていても、俺は彼の「それ以上」になりたい。
それは、こうしている今も煩いほどに鳴り止まない鼓動がはっきりと証明してくれている。
「――…!」
上手く言葉にできないのが、歯がゆくてたまらない。
この気持ちも、鼓動も、全部このまま伝えられればいいのに。
自分に向けられている、珍しいものでも見ているような表情を見るのが辛くて、何か言わなきゃと思って口を開きかけた。
その時。
もう失われたものかとまで思っていた、戻って欲しくてたまらなかった彼の笑顔が、突然そこへ戻ってきたのだ。
――え? と思う間もなく、その輝くような笑顔に乗せて、今ここにいる全員を呆気に取らせる台詞を、彼は放った。
「まあいいや。それじゃ、なろうか。恋人に」
………。
「……え?」
思わず間の抜けた声で聞き返してしまった。
……冗談、なのだろうか?
それとも、本気……?
………。
この人が「何を考えているのかわからない」というのは、正直にいえば俺も少しだけ思っていた部分はあった。
言葉の真意が知りたくて太陽のような瞳をじっと見つめてみても、そこに映る情けない顔の俺に同じことを聞き返されるだけだ…。
いよいよ本当に混乱してきて、どうすればいいかわからなくなった時――。
「ふざけるな!!!」
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