アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
節分
-
「お父ちゃん。今日な…おやつに豆出たから、お父ちゃんの分残したんよ」
最近、竜也は忙しい。
組内で竜也を若頭にと推す話が各所で上がり始め、帰りが遅い日が続いている。その為、京之介に大和をお願いする事が増えた。
「え…あ!今日節分かっ。悪い…忘れてたわ。恵方巻どないしよか」
帰って来たばかりでコップへ注いだ水を一気に飲み干した竜也は、大和が持って来た豆を目にしてバツが悪そうにしゃがみ込む。
節分、毎年金がないなりに準備をし、大和楽しみにしていた。なのに、今年は忘れてしまうなんて…。
大和に我慢させてばかり。
「大丈夫や♪食パンあるやろ?これにジャム塗ってな、丸めるんよ」
でも、大和はそんな事微塵も見せない。それどころか食卓から食パンを持って来て、用意したお皿に乗せ始める。
ぎこちない手つきで食パンへ塗られるイチゴジャム。それをまた小さな手でなんとか丸めると、ロールになった食パンを竜也の目の前へ掲げた。
「ぉお、何やそれ」
「りなちゃんのお弁当のやつ」
「シャレとんな」
最近のお弁当にはそんな代物が入ってるのか。
いつもなんとか作り上げる竜也のお弁当とは大違い。
大和に気の毒な思いさせとんな…竜也は再び凹みながら大和が作ってくれたロールパンを手に取った。
「サンドイッチやて。ラップで巻いたら丸まる言うてた…ほら、恵方巻」
「ホンマや!大和凄いな…ほな、豆撒きするか?コンビニで買うて来よか」
「撒かんでええ…鬼さん、もういっぱい投げられてるし」
「大和…」
こんな親でも優しく育つ息子に頭が下がる。
遅く帰り、行事の一つもしてやれない父親へ笑顔を向ける大和の可愛さ。
たまらない…本当に、大和がいるから生きていける。
大和がいなかったら、妻を亡くした時点で生きる意味を見失いそうだった。家族のいない竜也に初めて出来た温もり。
竜也の毎日は、大和によって生かされている。
「大和…ごめんな、何も出来てへんで」
「何で?お父ちゃんがいてるやろ♡」
なんの疑いもなく自分を見つめる、大和の真っ直ぐな瞳。
疲れが吹き飛ぶ。
「はぁ…お父ちゃん、幸せすぎるわ」
「俺も幸せ。ずっとお父ちゃんと一緒やし」
「うん、せやな」
守り抜こう、この宝物を。
何があっても、自分の全てに懸けて。
竜也は大和の体を優しく抱き寄せ、天に感謝した…神様、俺に大和を授けて下さって本当にありがとうございます…。
「大和、愛してる」
「お父ちゃん…大好き」
明日もがんばれる。
※お久しぶりです。なかなか更新出来ずすみませんでした🙏
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 11