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デート?
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少し暖かくなった日曜日。
大和は楽しみにしていた事がある。
「大和、お昼先に食べるか?」
「ううん、先に映画がええ!」
「そうか、ほな先に映画館行こ」
「ヤッター♪」
生まれて初めて映画を観る。
それも、大好きなお父ちゃんと一緒。映画が観たいと言った大和の為に、1日オフにしてくれた。
「お父ちゃん、映画館ン中暗いから手ぇ繋ご」
「せやな…迷子になってもあかんしな」
毎週日曜にテレビで放送されていた仮面ライダーの映画版。今幼稚園での話題はこればかり…しかも友達が次々観に行っているのを聞いて、珍しく大和もちょっと観たくなったのだ。
「知ってた?こうやったら恋人繋ぎやで」
「え…」
大好きなお父ちゃんと2人きりで映画館。
これは、まさにデート…♡
大和は小さな指を竜也の手の隙間へ入れ、恋愛ドラマで目にしたままを指南する。
「ジュースは1個でストロー2つやな」
「は」
「あ!カップルセットがある♪」
「デート!?」
竜也に付け入る隙はない。
頼んだドリンクカップへ無理矢理ストローを2本差し、カップル用に用意されたポップコーンとドーナツ(ハート型)を有無も言わさず注文。
「お父ちゃん、楽しみやな♡」
「ぷぷ…せなや」
片手に注文した物を持ち、片手を大和と恋人繋ぎで結ばれた竜也はもうおかしくて仕方がない。
あー可愛い、デートか…。
日頃の疲れが吹っ飛んでいく。
そして、他の客達が微笑ましく振り返る波をかき分け、2人は目的のホールまで行き着いた。
「ここ、チケットと同じ数字書いてる!」
「ホンマや、ようわかったな」
「へへ///」
まだアルファベットを知らない大和は、とりあえずチケットと同じ文字を探した。
周りも親子連れがほとんど。
でも…。
「ウチのお父ちゃんが一番格好ええ…」
沢山いるパパ達を見渡し、優越感に浸る大和の得意げな顔。
「どした?」
「何でもない。お父ちゃん、ドーナツ食べたい♪」
「おう、落とさんよう気ィつけてな」
大和は竜也からドーナツを渡されながら、嬉しそうに大きなスクリーンへ目をやった。
日曜だからと言って竜也が家にいるとは限らない日々。映画なんて、友達が行ったと盛り上がってても自分には関係ないくらいに思ってた。
竜也に無理をさせたくないからだ。
だけど、本当は少し観たいなと感じる時もあった。いいなぁと聞き耳立てては我慢していた。
「お父ちゃん、ありがとう」
キラキラした目で前を向き、囁く大和の声が暗くなっていくホールの中で竜也に届く。
「大和、また来ような。お父ちゃん、必ず時間作ったるから」
「うん!」
次の日、幼稚園では仮面ライダーの話に入っていく大和の姿が。皆で映画のシーンを再現してはしゃぎまくった。
後でそれを京之介から聞いた竜也は、嬉しそうに頷きながら寝ている大和の頭を撫でていた。
どんなにませた事を言ってても、まだ5歳。
5歳なのだ。
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