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「あ。今日は早く来たんだ」
階段を降りて一旦帰宅してから来てやろうかと血迷っていたら、清白菜(すずしろ)が声をかけてきた。俺はなっちゃんと呼んでいたが深い理由は無い。
「なっちゃん、おはよう」
「おはよう」
背が高いし、淡い色の髪が、遠くからでも目につく。
教室で会ったときに、きれいな色だなと純粋に話しかけたら何かと会うようになった。
「今日は雨かなー」
「いーや、晴れてる」
「これから降るかな」
わざとらしく窓を見られたので、面倒で、あぁそうかもなと返した。
少し前なっちゃんは俺が嫌いなんだろうなと思っていたことを思い出す。しばらく話すうちに、彼が気をつかったように笑うことが増えたから。
よくそんな風に、気をつかう笑い方をされたあと知り合いが去っていくという場面を俺はなんども知っているし、それににていた。
それはよく
『あなたとは合わない』
の合図だった。
まあ今、なんだかんだで変わらず話してくれるし、わざわざ確かめなくてもいいけれど。
けれど。
わからない。
俺とは合わない、のに、見捨てないヤツなんて初めて見たから、なっちゃんが何を考えているのか、さっぱりで、混乱する。
いつからか、なっちゃんが俺のそばで気を遣うように笑うのは、俺のせいでは、ないのだろうか。
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