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ひととき
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ふふっ、となっちゃんが笑ったのを見て胸が苦しくなる。
「なんか面白かったか?」
「いやいや、かわいいとこあるよね」
「……」
むすっとして唇を尖らせると、どうかした?
と聞かれた。なっちゃんには言われたくない。
「えっくん、どうかしたの」
あー、もう。疑問そうにこっちを見てくるんじゃねぇ。
「お前のせいだからな」
適当な言葉を吐いて、すたすたと彼を置いて一階に向かって歩いていく。少し空気でも吸いにいこう。
「えっいや、意味がわかんないって」
強いんだか弱いんだかわからない、まっすぐな目とか、優しそうなのにどこか肝が座っているところとか、今の笑いかたとか、なんだか……
いや。
考えない考えない。
ポケットからもう一度、あの育成ゲームを取り出す。
なにかよんだ?
とキャラクターが首をかしげたから、つい、きゅんとして
「ん、どうもしないよ?」
と気持ち悪いくらいにこにこして、我に返った。
「そう、違う、間違いだ。これは、だから。
こいつが可愛いから」
つぶらな目が、俺を見つめたり、跳び跳ねたりしているのを見ながら、なぜかなっちゃんを思い出した。
「すずしろ……」
壁にもたれて目を閉じながら、苦しい動悸をおさえる。
早く、早く納まれば、いつものように無関心に、無感情に、生きていけるのに。
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