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痛くなくて
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少しラグがあってからじわっと、下手な裁縫の波縫いみたいに不規則な血の塊がにじんできた。
「切ったらこうなるんだ」
なんだか他人事みたいに感じる。
さっきのは浅かったからあまり綺麗に血は出なくて、ただ不格好に怪我をしたって感じ。
じわじわと、ひとつずつ赤い花みたいに皮膚に咲いていく血のラインに、きれいだなと感じたけれど、同時になんだか、このままじゃエスカレートしそうだ。
なんたって征服欲が満たされる。
俺をこんなにしているのは俺自身なんだと、証明してる気分。
決して河辺とかカンベとか、あと知らない作家や芸人じゃない。
他人にあんなに生活に入り込まれたことが無かったからか、まず、見ず知らずのやつが俺の邪魔をしたということが悔しくて。気がついたら、少しずつ傷を深くつけていた。
気分がすっきりして、その日はノートじゃなくて、止血にいそしんで終わった。
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