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過ぎていくこと
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教室にはまだ、誰もいなかった。
河辺はクラスの日直らしい。俺は一人で屋上のある階段に向かった。
嫌いな人を少しでも好きになれたら、汚されたノートや俺の人生を少しでも好きになれるかと思った。
許せると思ったのに。
実際にやっていることは、アームカット。
なっちゃんも突然好きだなんて言うから、俺の今日の脳内の容量はすでに限界になりかけていた。
あまり笑える状態ではなかったけど、よく、こういう行為をする人が、それを後ろ向きにとらえないで欲しいと言った意味は今ならわかる気がしていた。
軽くでも、ただ純粋に心地良いのだ。
跡が深くなる前にはやめなくちゃな、と頭の片隅では考えているけれど、果たしてやめられるのかはわからない。
ポケットから、持ってきていたハサミを出して、手首に当ててみる。
血が伝いはじめるとやっと我に返って、でもどこか気分が前向きになる。
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