アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
........
-
「私、そんな余裕持てなかった」
なぜか、綺羅はややトゲがある言い方だった。長机が6つおかれた部屋に入り、一番右端にあるひとつの椅子に座り、彼女は言う。
「こんなに辛いのに、
なんでわかってくれないのってことしか考えなかったし。わかってくれる人も居るかもしれないなんて、思えなかった」
「そうか」
あまりの勢いにたじたじになりながら俺は答える。やばい、怒られるかとよくわからないけれど身構えた。
彼女は少し目を押さえた。
な、泣かせっ……!
焦っていると声。
「なんだ。立ち上がれた人って、何も、特別じゃないんだ」
諦めたような、安心したような声音だ。
「私よりも、周りを、見ているってだけ」
「おう……」
前にテレビで見た特集だと、嫌がらせはあったけど他の場所に友達が居たという話は多いらしい。
挫ける前に居場所があることが、彼らが閉じ籠らずにいられた理由だと言われていた。
俺だってそうだった。
案外、『ここしかない』『拠り所は他にない』 という気持ち自体のほうが一番の厄介なものだということを、ノートを奪われて知った。
それほどのものだった。
「そか。そんな人を、私、コネだとか実力があるからだとか言って、呪ってたんだね。
まだ出来るかもしれないことも努力しないで」
「気付くだけ、それを苦にいじめるやつよりは成長してる」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
89 / 545