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邂逅
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「くそ……どの抗生物質も効かんのか?」
今月だけで既に20人以上の患者が運び込まれている。
「はい、今のところ、有効な抗生物質は確認されていません。それどころか、症状を軽減させる薬すら……。」
ベルは苛立ちを抑えて立ち上がった。
普段温厚な彼がここまで苛立ちを顕にする事はなかなか無い。
美しいブロンドの髪は無造作に束ねられ、海の様な深い色の蒼眼には影が落ちていた。
それもこれも、原因不明の病のせいで、運び込まれる患者の命が掌からこぼれ落ちるように消えていくせいだった。
ベル=バルクは、地上にあるオルフェウス研究病院で一番腕の立つ医師だ。
彼は何度も難病を患う人々を旧世紀及び新世紀の医療技術を駆使して救ってきた。
その彼にとって、目の前の命を為す術なく逝かせてしまうことは耐え難い苦しみだった。
「悲報です、ベル、カナン列島郡の南端、ラパパ島の住人が全滅したそうです……。」
「アルカナ、それは本当なのか?」
「はい、近隣の島の住人からの情報ですので確かなことかと。」
ベルの顔が更に険しくなる。
「どうしてそんなに状況が悪化したんだ……」
「……病死体の火葬が……間に合わないほどに急に感染者が増えてしまったそうです。」
「……わかった。アルカナ、すまない、船の用意を頼む。私はラパパ島に血清保持者を探しに行ってくる。」
「分かりました。私も一緒に行きます。」
「君は!」
「私は貴方のパートナーです。Ωだからといって甘く見ないで下さい?こういう性格が、貴方もお気に召したのでしょう?」
「………分かった。準備が出来次第、すぐに行く。防護服を用意しといてくれ。」
ベルとアルカナが、ラパパ島に着いたのは夕方だった。
高速船を駆使して島を目指したが、やはり列島の最南端まではそれなりの時間がかかる。
本来なら、日が高いうちに島に到着したかったのだが、今更そんな事を言っても仕様がない。
高速船を岩礁に停泊させ、船員を数人とアルカナを、残し、ベルは一人で上陸した。
島の内陸は酷い有様だった。
火葬が間に合わなかった病死体が集落からさほど離れていない所に並べられていた。
暖かい気候が悪影響し、その大半は腐敗が始まっている。
(十分な火葬施設もないのか?!これは酷すぎる……)
ベルは集落へと足を進め、家の中もいっけんずつ調べてていった。
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