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邂逅
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家の外の惨状は酷いものだった。
匂いを嗅いだだけで戻したユアを抱き直したモコモコは、彼の目を塞いだ。
「すまないな、子供に見せるものじゃなかった。」
「それより!!あんた誰?!俺を何処に連れてくんだよ!!」
「それもすまない、私はオルフェウス研究病院の医師だ。君のかかった熱病、あれには今のところ、有効な特効薬が無いんだ。」
(オルフェウス研究病院って、都市部にあるあの?)
そこまで言われてユアにはピンと来た。
昔、兄に言われて読んでいた本に、病気によってはその病気から生還した人間の血液から薬を作ることが出来ると書いてあった。
「俺の血から特効薬を作りたいって事?」
ユアの発言にモコモコは少し驚いていたが、やがて嬉しそうにそうだと答えた。
「よく知っているな。」
「兄さんに読めと言われた本に書いてあったから。」
ユアはモコモコに返事をしつつ、ぼんやりと夢の中で聞いた声の事を思い出した。
『お前は大丈夫、お前は必ず生き延びる。そうやって、この世界と命を繋ぐ為に生まれてきたんだから。』
(こういうことなのか?)
誰にともなく語りかけると、まるで返事でもする様に風が頬をなでた。
途端に、今まで出なかった涙が溢れてきて風がなでた後を辿るように頬を伝った。
モコモコの首に腕を回して嗚咽を堪える。
「ウグッ……ヒッグ……ウヴ………」
「泣いても構わない。血清を作るために故郷を離れろなんて。家族を亡くしたばかりの子供に言うには酷な話だ。」
それでも、と白いモコモコは言葉を嗣いだ。
「情けないことに、私達はもう、君に頼る他ないんだ。」
「俺に選択肢は無い。残ったってどうせ野垂れ死ぬだけだ。それならあんたと行く。」
(きっとそれが俺の生き残った意味なんだから。)
「ありがとう、そうだ、君の名前は?私はベル=バルク。」
「ユア。友愛って風に書くらしい。」
「綺麗な名前だ。よろしく、ユア。本当にありがとう。」
モコモコ、基、ベルはユアの頭をなでながら、海の方へと足を進めた。
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