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知らない事
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あれからすぐに高速船は都市部に向かって出発した。
実験動物の様に研究所に監禁されると思っていたが、意外にもベルとアルカナに連れてこられたのは、大きめの一軒家だった。
「これからユアには血清を作るのに沢山協力してもらう事になる。君にとっては辛いこともあるかもしれない。」
「私もできる限りのサポートはする。しかし、矢張り血液を提供する側には色々負担をかけることになるだろう。」
「だから可哀想な俺と一緒に家族ごっこでもしようってことか?同情は要らない。」
実験動物ならそれ相応の対応が欲しかった。
無償の愛情、などというのは本来実の親が自らの子供に与えるものだ。
その実の親でさえ、時折その役割を放棄することがある。
それを他人の子供である自分に目の前の2人が注げるなんてユアには考えられなかった。
2人の意思が同情から来るのであれば尚更だ。
そんな関係は絶対に上手く行かずに近く崩れ落ちるだろう。
その気持ちをユアは2人に伝えた。
「助けてくれた事は感謝している。あのままじゃ、俺は確実に家族がいる家で腐臭に犯され、気が狂って死んでた。」
「……ユア、君は無償の愛は信じられないと言った。なら、無償じゃなければ信じられるんだな?」
突拍子もないことを言い出したベルに少し驚きつつも、それを隠して頷く。
「なら、君はもう私たちに十分過ぎる代償を払っている。」
「何を?」
「君を拘束する事と、血液を提供する事。」
それで対価は十分だと真剣に言われユアはそんなものだろうかと首を傾げた。
生きる権利と養ってもらう事は別ではないかとも思ったが、直ぐに2人がいいと言っているのであれば自分はそれに乗ってしまおうと思い直した。
「あんた達がそれで構わないなら、俺もそれでいい。家族ごっこがしたいなら、それにも付き合う。その代わり、絶対に途中でほっぽり出さないでくれ。」
ベルとアルカナはそう言ったユアを見て何か言いたげにしていたが、何も言わず、ユアの頭を撫でた。
「それじゃあ、よろしく、ユア。」
「よろしくお願いします、ユア。」
「よろしく。」
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