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夢
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その日の夜、ユアは自室で眠りについた。
身体は病み上がりで疲れきっていた上、兄と下の兄妹の死で精神的にも限界が来ていた。
用意されたベッドはふわふわしていて、直ぐに泥の様に夢の中へと引きずり込まれる。
夢の中で、ユアは家族と一緒にいた。
本当の家族とだ。
兄は優しく笑いかけて頭を撫でてくれる。
(あぁ、兄さんにも少ないけどこうやって頭を撫でて貰ったことが確かにあった。)
ベルの手とは違う、水仕事や土弄りをするせいで少し荒れたゴツゴツした手。
そんな兄の手が好きだった。
その手に頭をすりつけると、兄は困ったような顔をしてユアを抱き上げた。
兄はαだからか、飛び抜けて身長が高かった。
だからユアは兄に抱っこしてもらうのが好きだった。
「兄さん、大好き……」
「俺もだよ。そして、リンもラスもお前が大好きだ。だから、俺達が居なくなっても迷わず生きていけ。」
そう言うと、一際強く抱きしめて、兄はユアを地面に下ろした。
「ゴメンな、ユア。2人が待ってるから、もう行かないと。」
「どこに?何処にいくの?俺は一緒に行けないの?」
「ユアはまだ来ちゃダメなんだ。俺達が行くのは、お前と俺達のママとパパの所だから。」
その瞬間、ユアは兄の腕を思い切り掴んだ。
「嫌だ!!行かないで!行くんだったら俺も連れてって……。」
「ごめんな、ユア……愛してる。フィリアによろしく伝えてくれ。」
額にそっとキスをされる。
そして、兄が手をかざすと、腕を掴んでいた力は当然のように緩んだ。
追いかけたいのに、足が鉛のように重くて動かない。
そのまま、発狂しそうになりながらユアは兄の背中を見えなくなるまで見送った。
涙が止まらなかった。
嗚咽がつかえて、息が苦しかった。
何より、胸が潰れてしまったかのように痛かった。
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