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秘められるべき事
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検査を始めて数ヶ月で出来上がった7日病の特効薬のおかげで、地上の病気の蔓延は収束した。
しかし、ユアの血液の研究は未だに続けられている。
ベルと、アルカナだけで少しずつ。
ユアの血液。
それは、万病の薬にも匹敵するほどの価値があるものだった。
あらゆる形の受容体を持つ抗体、異常の全くない血球。
酸素濃度、タンパク質の量何もかもが完璧だった。
その事に気づいた時、ベルとアルカナは戦慄した。
医者として、宝の様なユアの血液の存在を喜び、そして親として、その血液を持つユア自身を心配した。
もし、この事実が中央政府に知られたとしたら……。
ユアは良くて中央政府の所有物として戦艦に連れて行かれる。
悪ければ、実験マウスの様に監禁されて、薬を作り出すためだけに生きる存在に堕とされるだろう。
だから、研究チームは7日病の抗体が出来上がった時点で解散した。
今のところ、ユアがΩであるという事実は漏れていない。
その事を考えれば、研究チームを信用しても良かったのかもしれないが、2人は万が一を考えて2人での研究を選択した。
この事実はユアには伝えていない。
彼は口では毒を吐きながらも、根はとても優しい。
だから自分の血液が万病に効くと分かったらあちこち回って貧血で倒れるまで血を分け与えるだろう。
それを危惧して、2人は伝えなかったのだ。
そんな2人は、ここのところ、ユアの様子がおかしいことに気づいていた。
何故か浮かない、不安そうな顔をしているのだ。
勉強をしていてもどこかぼんやりとしていて、上の空。
何処か憂いを帯びた表情は艶やかで、研究所にいる人々をざわつかせている。
勘のいいアルカナとベルは、何か良くないことの予兆を嗅ぎとっていた。
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