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逃亡劇
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呼吸が荒い。
吐き出す息が熱い。
どうすれば楽になれるのか分からない……。
抑制剤の効果は早くも切れたらしく、ユアは1人潜水艇のシートの上で悶えていた。
(くそっ……)
ブーッブーッ
その時、警報音の様な物が鳴った。
赤く光っているボタンをとりあえず押してみるとモニターに物凄い勢いでこちらへ迫って来る小型潜水艇が映った。
「もう追いついたのか……くそっ、動け!!このポンコツ!!」
ユアは自分の身体を叱咤し、先程のリュックから服用型の抑制を取り出し適量を飲水と一緒に流し込んだ。
そして、艦内にあった高性能のダイビングスーツを身に纏うと、同じく艦内に装備してあった水中ライフルを手に取り素早く外へと滑り出た。
ダイビングスーツからは命綱が潜水艇へと伸びているため、迷子になることは無いだろう。
と、水中ゴーグル越しにあちらも数名船の外に出てくるのが見えた。
こちらと同じように水中用の耐水ライフルを構えている。
(そんなへっぴり腰で当たるかよ!)
ユアは先手必勝とばかりに、2人の内、1人の腕を狙ってライフルを取り落とさせる。
追手はユアの射撃の腕に驚いている。
そのチャンスを見逃さずにさらにもう1人の腕を狙いライフルを握れなくする。
しかし、その前に発砲した弾が追跡弾だったようで太ももを掠った。
「っつ……やってくれるじゃねぇか……っこの!」
太腿にも数発撃ち込んで相手を戦闘不能にした後、ユアは自身の潜水艇に戻った。
気が抜けると一気に熱が戻ってくる。
「くそっ!くそっ!!」
このだんに来てようやく自分が抑制剤の効かない体質であろう事に気づいた。
そしてその頃にはもう身体は狂おしいくらいに疼き、痛みとはまた別のある種の苦痛を持って悲鳴を上げた。
「誰か……」
ベルとアルカナを思い浮かべ、それから兄を思い浮かべた。
「助けて……」
次から次へと涙が零れてくる。
ユアはこの時、久しぶりにΩに産まれてきた事を呪った。
(ああ、アルカナが俺にΩは駄目じゃないって教えこんだのは、発情期の時に心が折れそうになるからなのか……)
きっとアルカナは知っていたのだ。
この苦痛を。
だからユアには同じ思いをして欲しくないと思っていたに違いない。
そして、辛そうなアルカナを側で見ていたベルも………。
本当だったら、きっとアルカナはつきっきりで最初の発情期の時面倒を見てくれていたに違いない。
ベルはαだから無理かもしれないけど、きっと慌ててご飯を作ったりドリンクを作ったりしてくれただろう。
(なんで追われなければならないんだ。)
自分の中の悲しみと弱い心を怒りに変え、それを更にエネルギーに変えた。
(俺は絶対捕まらない。中央政府なんて知ったことか!!)
ユアは血が滲むくらい唇を強く噛んだ。
そして、熱に侵された瞳で前方を睨みつけた。
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