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感情
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「何度も言っているように、キマイラには内面的、もしくは精神的共感力が強いものが多数いる。
ユアのそれは実は通常のそれとは少し違うのだが、とにかく、普通の人間よりも種族全体としての精神的な繋がりが強く、スピリチュアルな世界を信じる生き物なのだ。
そんな面に置いて彼はかなり苦労をしてきた。
珍しいキマイラ。
ブラックジャガー。
Ω。
気持ち悪い。
言葉が聞こえる訳では無い。
悪意や憎悪が肌を通して伝わってくるのだ。
だからユアは無意識に人を選ぶようになっていた。
彼の兄もそうあるように彼に教えた。
彼自信が傷つかないように、自分を守れるように。
だからユアは甘えないし、心も基本的には許さない。
直感的に心を許しても大丈夫だと分かる存在以外には……。
「俺はカナタさんにも、ロランにも甘えてる。だって、普通ならこんなに世話になったりしない。例え野垂れ死にするとしても1人を選ぶ。」
それがユア。
彼の本心であり、決意であり、強さ。
唯一無二の彼の信念だった。
実際、ベルとアルカナに拾われた時もそうだった。
ユアに取って1人である寂しさはその他大勢で居る時のリスクを考えた時、どうでもいいものとなる。
情は人の生死を左右する、とても面倒なもの。
そして、とてもステキで温かいもの。
それを切捨てるという決断をするのも、受け入れる決断をするのも、ユアを成長させるのだ。
(なんだろう。今、すごく泣きそう。)
その時、後ろから獣が唸るような声が背後から聞こえてきた。
「カナタ、ユアを泣かせるな。」
「僕は泣かせてないよ。」
にこりと効果音がつきそうな笑顔を双方に向け、カナタはロランも食卓に着くように促した。
ロランは文句を垂れながらも言われた通り席に付き、なんということのない朝食の時間が過ぎていった。
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