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中央政府より
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「お初にお目にかかります。タカオミ総帥、ケイと申します。私はΩですが、他の護衛よりは腕が多少立つので、どうぞよろしく。」
ケイは自信満々に自分は強いと言ってみせた。
堂々とした立ち居振る舞いは美しく、そして落ち着いた声はタカオミのささくれだった心をなだめ、平常に戻した。
「……ああ。これからよろしく頼む。」
思わず見蕩れ、返事が言い淀んだ様になってしまい、タカオミはしまったと思った。
「はい。よろしくお願いします。」
しかしケイはそんな事を気にしてない風ににこりと笑ってみせた。
「「っつ!?」」
目が合った瞬間、身体に電気が走る。
(こいつが……)
ユーリは首をかしげてフリーズしてしまった俺達を見ていた。
いち早く硬直から逃れたタカオミがユーリに何事も無かったかのように指示を出し、そのまま業務を始めるよう促した。
「ケイ、お前は残れ。」
「………分かりました。」
ユーリの後に続こうとしたケイを呼び止めたのが何故なのかは分からなかった。
だが、夢に出てきた白銀の髪をした青年が彼であると、その事だけはハッキリとわかった。
(まさか、始祖の血を引くあの子に会う前に……)
今の今まで、タカオミは自分の運命が始祖の末裔、つまりユアであると信じて疑わなかった。
しかし、この感覚は疑いようもない。
目の前にいる彼、ケイがタカオミの魂の番だ。
「お前は……ケイ、お前は……。」
「そうだと思います。疑いようがない。俺は貴方の魂の番だ。」
「声を聞くだけで心が満たされる。お前は俺の運命なんだな……。」
ケイは困った様にタカオミの前に立ち尽くした。
「新世紀になってから魂の番を前にして、そこまで悲嘆にくれる人もなかなかいませんよ。」
タカオミは顔を伏せて拳を握った。
ケイは息をひとつ吐くと、落ち着いた様子でタカオミの顔を両手で挟んで自分の方へ向けさせた。
「何も、運命だからって必ずしもその手を取らなければ行けないわけではないんです。貴方の心に他の誰かがいるのなら、その方と番になるという道もある。」
そしてまたにこりと優雅に笑って言葉を継ぐ。
「だからそんな、迷子になった子供みたいな顔をしないでください。中央政府96代目総帥の名が泣きますよ。顔、勝手に触ってしまってすみません。俺はこれで失礼します。」
タカオミがもう一度見た時にはケイの表情は最初の飄々としたものに戻っていた。
しかし、タカオミにはΩが唯一無二の魂の番の相手を目の前にして手放すというのがどれほど大変な事なのか分かっていた。
その上で、ケイが部屋を出ていく様子を見ながら何も言えなかった。
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