アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
友愛《井澤目線》
-
「只今〜...」
アパートの自室の鍵を開け、小さな声で言い放つ。
勿論返事は無い。
行き場の無くなった声達は、すうっと壁の中へ吸い込まれて行った。
今日、知らない女子から告白された。
今まで話した事も多分無い、ましてや違うクラスの子に、だ。
思わず、何で?と質問してしまった。
「京介君は優しいし、格好良いし、一緒に居て楽しそうだから」
彼女はこう答えた。
大人しくて、純粋で、可愛い子だったから、別に付き合っても良かったのだろう。
だけど、断った。
「有難う、でも、俺別に好きな人が居るんだ」
って。
好きだ、と言った時から涙を目に浮かべる程の子だったから、断ったら泣いてしまうだろうと思って、躊躇い声が小さくなってしまったが、はっきりそう伝えた。
案の定彼女は泣いてしまったが、吹っ切れたので良かった、と言った。
そこからしばらく、当たり障りも無い会話を少しして、有難う、と最後に一言。
彼女とは友達になった。
そこまでは別に良い、問題はこの後だった。
帰る準備を終えて、靴を履き替えている最中、彼が、新太が、生徒玄関に来た。
一緒に帰られる、と俺は嬉しさでいっぱいだったが、新太はと言うと、何処か様子が変だった。
目やその周辺は赤く腫れ、心做しかやつれて見えた。
俺が告白を受けているのを聞いたのだろうか、だとしたら、新太が泣く必要などあったのか。
色んな考えが頭を駆け巡ったが、最終的にそこには触れずに、寄り添ってあげようと思った。
帰宅途中も、何とか彼に笑って欲しくて、どうでもいい話を次から次へと語った。
いつもの彼なら、こんな会話でさえ楽しそうに頷いて聞いてくれるのに、今日は何処か上の空。
新太は昔から小さい出来事でもショックとか、不安を起こし易かったから、何かまだ思い悩んでいるのかも知れない。
「......俺が、味方にならなきゃ...」
誰も居ない小さな部屋に、俺は小さく決意表明する。
取り敢えず、心のもやもやは顔を洗うのと同時に水に流した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
7 / 8