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ミーンミンミン…
直線的で、じりじりと焼け付くような暑い日差しが肌を刺す。
真っ青な空を支配する、綿飴のような入道雲。
朝から晩まで、その存在感を示す蝉の声。
……大地、気に入ってくれるかな……
待ちに待った花火大会当日。
僕は浴衣を身に纏い、慣れない下駄を履いて、大地の住むアパートへと向かった。
「……悪い、急な仕事が入った」
玄関のドアが開かれるなり、大地が申し訳無さそうな顔を出す。
その言葉を聞いた瞬間、それまで高まっていた気持ちが一気に落ちる。
「……え」
「今回は外せない、大事なカメラの仕事なんだよ」
すっかり身支度を済ませた大地は、玄関に置かれたバックを背負った。
……大事な、って……
僕よりも…そんなにカメラが大事……?
浴衣の袖口を掴むと、唇を尖らせて俯く。
「……そんなに大事なら
早く行っちゃえ、…ばか……」
少し震えた声でそう言い放つと、溢れ零れそうになる涙に堪える。
そんな僕の頭に、大地の大きな手のひらがぽんと置かれる。
「拗ねるなよ……直ぐ帰るから」
「……」
「じゃ、行ってくる」
ぽんぽんとした後、僕の横を通り過ぎ、大地の手が離れた。
……やだ、行かないで……
下瞼の縁に溜まった涙が溢れ、ぽろりと零れ落ちる。
「……ばか……」
大地の為に、…浴衣着て
穴場まで、調べたのに……
下駄を脱ぎ、誰もいない部屋へと上がる。
「……」
……直ぐって、何時……なんだよ…
大地のいない部屋は、凄く静かで…何だか寂しい。
台所のシンク内に、水を張ったコップがひとつ。
余程急いでいたのだろう……蛇口からぽたぽたと水が垂れている。
それをキュッと締めると、和室のリビングへと振り返った。
小さなローテーブル。
その上に、A4サイズの茶封筒。
畳に足を踏み入れそこに近付くと、その封筒を拾い上げる。
……忘れもの……?
糊付けされていない封を開け
中を覗いて見る。
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