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Vivre dans la révolution~革命に生きて
デシャン一族の料理人
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ジャン=ミシェルとジャン=クサヴィエ。
デシャン一族の一人で、ジャン=フランソワの従弟たちである。
純粋な王党派の料理人で双子の兄弟。父はジャン=シャルル・デシャンで、ブルジョワ家庭の料理人。
1762年パリ6区で誕生。16歳のとき、共にオーギュスタン・アングラードの弟子入りをした。
「泣き言を言ったら、拳万し合おう」
二人は弟子入りする際、誓い合った。
無論、容赦ない怒声や鉄拳制裁も常に隣り合わせ。
我を忘れ、厳格な修行をこなしていき、20歳で頭角を現した。
そして、二人は王党派貴族の専属料理人として雇われるようになった。
その時期、ジャン=ミシェルはオーギュスタンの娘マリー=エリザベートと知り合い、結婚。
ジャン=ミシェルは25歳、マリー=エリザベートは18歳の幼妻。
ジャン=クサヴィエはアルザス出身のマリー=ジョセフィーヌ・ダール(マリー=シャルロット・ダールとは姉妹同士)と結婚している。
ジャン=ミシェルは貴族の料理人として成功して、マリー・アントワネット王妃の舌を満足させるような料理や菓子を作っている。
方や、ジャン=クサヴィエはカトリック・オラトリオ修道会付属学校の料理人として勤めることになった。
ルイやピエール、ディディエたちとは顔見知りの料理人になっていく。
「クサヴィエさん、今日の給食美味しかったよ。明日もお願いね」
「ディディエが美味しいって言ってくれると、作り甲斐あるな」
ジャン=クサヴィエはふと思う。ジャン=ミシェルには敵わない。
「ミシェルは出世街道まっしぐらだ。だけども、僕は僕だ。それなら、子息の栄養をしっかりと考えた栄養ある給食を提供できる料理人を目指そう」
しかし、二人に明暗がはっきりと別れることになった・・・
とても仲の良い兄弟で、切磋琢磨し合っていた。
ジャン=ミシェルはそのころ、マリー=エリザベートを妻に迎えていた。
最愛の妻のお腹には新たな命が宿っていた。幸せ絶頂のとき。
「クサヴィエもいよいよ挙式か?来年には父親になるんだが。月日が経つのって早いよな」
「ああ。これからは、ミシェルを追いつき追い越せ、という気持ちでもっと頑張らなければいけないな」
********
『元気で頑張っているか、クサヴィエ。僕は今日、国王一家の料理を務めさせてもらった。国王様たちの舌を満足させるのはとても、簡単なことではない。だけど、やりがいはとても感じる。今日は、メンディー一家が国王様たちと謁見だ。父上やジャン=フランソワたちも一緒だった』
ジャン=クサヴィエはジャン=ミシェルからの手紙を受け取った。
そのころ、ジャン=ミシェルは国王陛下の宮廷料理人として認められ、軌道に乗るようになった。
方や、ジャン=クサヴィエはディディエやギョームのカトリック・オラトリオ修道会付属学校の給食担当の料理人として働くようになった。
料理ばかりではない。食材の栄養素のこともしっかりと勉強をしていた。
子息たちに少しでも栄養の高い料理を作りたい。
「この週末。僕たちは里帰りします。ギョームの家で、ミシェルさんが料理を担当します」
「ディディエ、僕がミシェルに掛け合ってあげようか?」
一週間後、メンディー一家の料理を作ることになったジャン=ミシェル。
メンディー家の舌を満足させたのは言うまでもなかった。
「メルシー、ムッシュ・ミシェル。言葉が見つからないほど美味しかったです」
*****
ジャン=クサヴィエはそのとき、パリに買い出しに行こうとしていた。
物価の値上がり・・・度重なる悪天候で農作物の不作・・・
街並みにあふれる路上生活者・・・移民も少なくはない。
その夜、ジャン=クサヴィエはジャン=ミシェルに手紙を書いた。
『度重なる悪天候の影響で農作物の不作。それに伴う、物価の値上がりが半端ではない。僕が見た光景は・・・そして、王妃様の誹謗中傷の新聞を目にしたんだ』
『何なんだ・・・?』
『畑は肥えているのに、農作物は不作。しかも、パンすら満足に食べることができない。オーストリア女の誰かが贅沢三昧しているからさ』
ヴェルサイユ宮殿で、自由気ままに過ごすマリーに、人々が反発しないわけがなかった。
浪費癖があり、人工的に田舎を作ったり、宝石やドレスを買いあさっているために財政が破綻したとして、『赤字婦人』と呼ばれるようになった。
しかし、国家予算の中の宮廷の出費の割合を考えると、国が傾くほどの浪費をしていたわけではない。
ルイ14世時代から続く財政難。そう、ヴェルサイユ宮殿の建築、アメリカの独立戦争への多額の援助。
また、貴族の間で、自分達の地位と名誉のため、着飾ったり生活水準を保つために借金をするのは当然のごとく。全く恥ずべきことではないものの。
ルイ15世統治時代となると、エスカレートするばかり。愛妾ポンパドゥール夫人のために経費を油水のごとく使っていたから。のちの大統領の住むエリゼ宮もポンパドゥール夫人のために建てられたものである。
フランス王国時代の国王には、公認の愛妾がいるのが当たり前の時代。
宮廷で王妃と同じように振舞うことができ、強い権力も持っていた。
そして愛めかけは身持ちが悪く、国のお金を浪費し、国王に対しても、よくない助言をするとして、人々の憎しみを集める役割もしていた。そうすることで、人々の目線は王妃から離れ、中傷は愛妾に集まるのが普通のこと。しかし、ルイ16世紀には愛妾がいなかったため、マリー・アントワネットに中傷が集中していた。
マリーなりに、経費を削減するなど奔走していた。仕来りの簡素化、マリー・テレーズ王女とルイ・シャルル王太子のおもちゃを我慢させるなど、自分なりに節約を探っていたけれども。
****
作者yunaより。
デシャン一族の料理人で双子の兄弟です。
ジャン=ミシェルとジャン=クサヴィエで、ディディエと知り合いの料理人になります。
「パリの天使」の攻めダヴィッドのライバルのエルネスト・デシャンの先祖を書かせていただいています。
そして、マリー・アントワネット。財政難のフランスを立て直そうと、自分なりに節約に奔走。
無駄を省こうと、仕来りの簡素化。
『人によって態度を変えている』
などなど、人格否定をしている、と批判を一心に受けていたほどです。
マリーだって本当はそんなことしたくはなかったと思います。
マリーが21世紀に向けた遺したわたしたちへのメッセージだと思います。
「無駄に時間を過ごすことをやめよう。一日一日を大事に過ごそう」
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