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Vivre dans la révolution~革命に生きて
チュイルリー宮殿
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自由といっても、議会に参加して法律を作ることはできない。本当の意味では自由と平等とはいいがたい。
自由と平等のために闘う。
オランプ・ド・グージュ、41歳の劇作家・女優。
のちに、「女権宣言」のパイオニア的存在となる。
革命の熱はヒートアップするが、市民の暮らしは楽にはならなかった。
財政難から来る生活苦に業を煮やした国民は、王侯貴族に反発したのだ。
オーストリアから嫁いできた上に貴族からの後ろ盾も薄いマリーはフランス国民たちの格好の槍玉。
10月5日。賛同した兵たちも合流して、しまいには大砲まで引きずっての大行進。
10月のヴェルサイユへの行進である。
怒り心頭の国民たちは、国王を出せ、と罵声を浴びせたのだ。
腐敗した宮廷を捨ててパリに戻れと王に要求。
そのころ、国王はあまり嫌われていなかった。その分、諸悪の根源として、マリーが責めを背負っていた。
王の顔を見ただけじゃ気が済まない国民は、罵詈雑言を浴びせてやろうと、「腐敗の象徴」マリーにも出てこいと叫んだ。
その日は激しい雨。落雷も襲ってきた。
「お母さま・・・怖い・・・」
幼いマリー・テレーズ王女、ルイ・シャルル王太子(のちのルイ17世)はおびえていた。
「大丈夫よ、お母さんが守ってあげるから・・・」
外に出れば物でも投げつけられるかもしれない。銃撃されるかもしれない。
しかし、このままでは民衆は荒れる一方。王への怒りも静まるまい。やっとのことで恵まれた息子にも火の粉が降り掛かるかも知れない。
自らの身の危険を顧みずバルコニーに出た、暴動の混乱に乱れた髪、真っ青な顔のマリー。
それでも、猛り狂う国民を見て、毅然と深々とお辞儀をしたのだった。
そのあまりの優雅さ、高潔さに、パンをよこせと騒いでいた国民たちも圧倒された。
王家を、子供を守るために自らの身を投げ打つ妻、母としての姿勢に、何も言えず、何もできなくなった、ということだ。
王室を守るため、必死で奔走するマリー。
家族を守らなければいけない・・・どうすればいいのだろう、と手探りだった・・・
しかし、そんなマリーの行動が裏目に出て、悲劇的な結末を迎える、という序章でもあった。
ヴェルサイユから身柄を移された国王一家。プティ・トリアノンはおろか、二度とヴェルサイユには戻ることはできなかった。ヴェルサイユでの王室の歴史はこうして、幕を閉じたのだ。
国民は口々に叫び声をあげた。
「・・・パリへ・・・」
「パリへ!」
この日、王室はパリへ移動させられた。
*******
「お母さま、怖い。お化け屋敷みたい」
「ここは、チュイルリー宮殿。ご先祖様たちがヴェルサイユ以前に住んでいた場所なの。こんな素晴らしいところに住めることに対して、感謝しなくてはいけません」
マリーは改めて、家族を守ろうと一生懸命努力をしていた。
ヴェルサイユから家具一切を持ち込まれ、初めての家族水入らずの生活。
国王もマリーも心から喜んでいた。信頼していた側近も一緒に。
「国王陛下、王妃様、王女様、王太子様。今日はどのようなものをお召し上がりになられたいのでしょうか?」
ジャン=ミシェル・デシャンは、にこやかに、丁寧にお辞儀をした。
勿論、囚われの身分なので、舞踏会や観劇などへの外出は一切しなかった。国王たち、自分たちなりの自粛だった。
「こんにちは、国王陛下・女王陛下様」
ディディエとギョームがチュイルリー宮殿を訪ねていた。
「ディディエ、ギョーム。パリ大学に入学したそうだな。おめでとう」
ルイ16世たちはディディエたちを絶賛していた。
「Bonjour monsieur Cléry et Deschamps」
「マリー=テレーズ、ルイ=シャルル。ディディエたちは一生懸命勉強して、将来は立派な政治家になろうとしているんだ。おまえたちも、ディディエたちに負けないように頑張るんだぞ」
その傍ら、ルイ16世は民衆に人気である議員と密約を結んでいた。
ミラボー伯爵オノレ・ガブリエル・ド・リケティ。通名はミラボー伯爵で、国民議会議員である。
ルイ16世は手当をしっかりと弾むことも厭わない、と宣言する。
「確約できるかどうかは難しい。情勢はとても不安定です・・・慎重にことを進めてまいりましょう」
「ミラボーさんは流石はデキる男だ。こんな政治家っていいよな・・・見習うなら・・・ミラボーさんもいいかな?」
ディディエたちは口をそろえていた。
仕事、名声、女と三拍子そろっている。
ジャン=フランソワともとても親しく、良きライバル的存在でもあった。
「ジャン=フランソワは国王の右腕的存在だ。貴族という名前に甘んじることなく、謙虚に仕事をこなす穏やかな男だ。おまけに、信仰深いしな」
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