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Vivre dans la révolution~革命に生きて
フランスの礎
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「・・・国王陛下・・・明日・・・断頭台(ギロチン)に上られる・・・」
「・・・」
ジャン=フランソワとクレリーは、ジャン=ミシェルとジャン=クサヴィエに重い口調で告げていた。沈痛な面持ちでいる。
そこには、マリー=エリザベートとエルネストもいた。
「国王陛下・・・?」
「ああ・・・エルネスト・・・」
マリー=エリザベートに抱かれる幼子エルネスト。
*****
四年前の7月・・・
『国王陛下、妻のマリー=エリザベートが男児を出産しました』
『おめでとう、ジャン=ミシェル。わたしが名前を付けてあげよう』
*******
エルネストの名付け親となっていたルイ16世。
ルイ16世は、その夜、家族との最後の面会が許可された。
しかし、時間の制限があった。
「陛下・・・」
悲しみのあまり、泣き崩れるマリー。隣には、エリザベート内親王、クレリー。
ルイ16世とマリーとの間に産まれたマリー=テレーズ王女、ルイ=シャルル王太子も泣きじゃくっていた。
「お兄様・・・お兄様は何も悪いことしていないのに・・・!」
「お父様!いやだ!!!」
「マリー、子供のためにも泣いてはいけません。わたしはあなたと結婚できてよかった。マリー、そなたがオーストリアから遥々とたった一人嫁いできてくれて本当に嬉しかった。初めて見たとき、一瞬で温かな気持ちになった。そして、一目見て、そなたを好きになった」
「陛下・・・また・・・お会いできます・・・マリー・テレーズ、ルイ・シャルル・・・お父様にご挨拶なさい・・・」
マリーはルイ16世に対し、気丈に振舞っていた。
「マリー・テレーズ、ルイ・シャルル。明日は神様の意思で断頭台にあがる。そして、国王としての最後の務めを果たす。どんなことがあっても、決して、相手を恨んではいけないよ。約束してくれるかい?」
「・・・わかりました・・・誓います・・・父上・・・おやすみなさい・・・」
幼い王女と王太子の無邪気な顔を見て、目頭が熱くなったルイ16世。
「・・・また・・・明日・・・」
しかし、明日は二度と、やってくることはなかった。
処刑当日の朝。
タンプル塔を出発前、ルイ16世は身なりをしっかりと整えていた。
そして、専属の贖罪司祭と祈りを捧げ、最後の旅に供えていた。
馬車に乗せられたルイ16世と司祭。
その姿を見送ったマリーは、堰を切ったかのように涙が止まらなくなっていた。
マリーの目に、国王ルイ・オーギュスト・カペーの最後の姿をこの目に焼き付けていた。
1793年1月21日、10時22分。
パリ・革命広場・・・
「マリー・・・済まない・・・約束を守ることができなかった・・・」
ルイ16世は最後の務めをしっかりと果たそうとしていた。
上着を脱ぎ、鬘も外した。
「ムッシュ・サンソン、お願いいたします」
処刑執行人のアンリ・サンソンに身をゆだねた。
そして、ルイ16世は手を縛られ、断頭台に上った。
「国民よ、わたしは、無実のうちに死ぬ。わたしの血がフランスの礎になることを祈るばかりだ」
ルイ16世の最後の言葉である。しかし、その声は、太鼓の音とともに閉ざされた。
そして・・・
ルイ16世の最期は、国王らしく、気高い最期だった。
アンリ・サンソンの内心はどうだったのだろうか。
*******
パリ・タンプル塔では・・・
ルイ16世の処刑を知らせるピストルの音が鳴った。
その音は、マリーたちに悲しみを新たにした。
「お父様!」
マリー=テレーズ王女は号泣していた。隣では、エリザベート内親王が慰めている。
ジャン=フランソワ、ディディエたち・・・
「陛下・・・」
マリーは悲しみに浸っているのは、程々にしなければいけなかった。
そして、ルイ・シャルルに対して、跪いた。
「ルイ・シャルル。あなたはルイ17世、国王陛下、万歳・・・」
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