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変わらない日常 1 (星side)
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眩しい太陽と、清々しい青空。
猛暑日が続く真夏の日々、まだお昼になっていないのに焼けるような暑さの中でオレは今日も開店の準備をしている。
高校を卒業して社会人になったオレ、青月 星(あおつき せい)は職場になっているこのお店『Plumeria』でウェイターとして働いているんだ。
お店のオーナーで美人なオカマのランさんのお店って感覚が抜けないけれど、オレも従業員の1人になった今はちゃんと店名で呼んであげなきゃってお店に対して思うから。
感謝の思いを感じつつ、オレは開店に向けての準備を進めていく。ランチの時に提供するサラダやスープの下ごしらえをしたり、各テーブルに置いてある様々な用品の補充をしたり。オレがランさんから任されている仕事に華やかさはないけれど、開店前にしっかりと済ませておく必要がある仕事。
料理人としてまだまだ未熟なオレは、ランさんのようにキッチンに立たせてはもらえない。でも、それでもオレはこうして好きなお店で働けることが単純に嬉しく思う。
仕事をしていると楽しいことばかりじゃないし、時にはランさんから指摘を受けることだってあるけれど。まずはウェイターとして一人前にならなくちゃって、そんな気持ちを日々抱きながらオレは腰に巻き付けた黒いギャルソンエプロンを揺らしていく。
店内から扉を開けて外へ出てたら、お店を彩る為の植物にたっぷりお水をあげるのもオレの仕事だから。明るい明るい空の下で反射するような真っ白なシャツを眩しく思いながらも、少しだけ鼻歌まじりに作業をしているオレの目に止まったのは、白シャツを着ているオレよりも眩しく咲き誇る花だった。
「綺麗に咲いてますね、ランさん」
お店の前の小さな花壇に沢山咲いてる色とりどりの花に水やりをしながら、オレは下準備を終えて外へと出てきたランさんにそう言って声をかける。
「そのお花は百日草っていうの。こんな暑い時期でも休まずに咲き続けてくれる可愛らしいお花よ、私も休まず働かなくちゃ」
優しい微笑みと、温かみのある穏やかな声。
未だにオレはランさんの年齢を知らないけれど、ランさんの本名は篠原 嵐太(しのはら あらた)。
色々説明すると長くなるから割愛するけれど、この人はきっと不老不死なんだってオレは勝手に思ってる。
「ランさんは少し休んだ方がいいと思いますけど……でもとりあえず、今日も1日頑張りましょう」
変わるようで変わらない毎日、学生だった頃と比べるとオレの日常は大きく変化したけれど。それでも、大好きな人の隣で眠りにつける日々が愛おしくて、こうしてオレを必要としてくれるお店で働けることが嬉しくて。
CLOSEからOPENになったお店の外観を見つめ、オレは今日も小さな幸せを噛み締める。
真夏の太陽の下で、可憐に咲いた花。
百日草の別名も、花言葉も知らなかった。
ただ、現状に満足していたオレの日常が、この時から少しずつ動き出していて。オレの知らないところで誰が笑って、誰が泣いている……そんな新しい物語のスタートは、今日という何気ない日の陽だまりの中に隠されていたんだ。
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