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秘蔵の想い+
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「んっ……く、あ……」
暗く、小さめの誰もいない部屋で、俺の荒い呼吸だけが響く。
「た、いちっ……」
罪悪感でいっぱいになった頭なのに、友人に犯されている自分がずっと浮かんだままだ。
イタズラっぽい笑顔も、
嫌そうに歪む顔も、
暑さで滴る汗も、
やる気の無さそうに見えてもバレーで流した汗の香りも、
シャワー後の優しい香りも。
全てが愛しく、俺の性を刺激した。
思い出せば思い出す程、妄想が深く成る程、体の中心に熱が集まる。
いきなり屈託のない笑顔を思い出して、びくりと体が震える。
「……っ、ごめん……」
一瞬で頭の全てを埋め尽くした罪悪感が、涙になって溢れ、それと同時に精が吐き出された。
局部に触れながら泣き崩れている姿など、もし見られたら。
直ぐ様処理をして、手を洗った後で風呂場へ向かった。
「お、賢二郎じゃん。? もう風呂の準備してんの? まだ三年入ってるぞ」
「たっいち……!」
風呂の前に来たところで、太一がソファーに腰掛けながらこちらを見ている。目を合わせるのが辛くて、自販機の方へ向かいながら声を出した。
「いや、用事、なんもなくて暇だったから、ここで待ってようかなって。……牛島さん見れたらそれでラッキーだろ」
「……ふーん」
どこか不服そうな声にびくりとする。太一がここにいると言うことは、どこかしら寮の通路を通っている。防音まで完備されているい訳ではないから、もし俺の部屋の前を通っていたとしたら……
__気付かれた?
込み上げてきそうになる涙を抑えるために、それか無理矢理でも誤魔化すために、適当に押したオレンジジュースをすぐ飲み干し、缶入れに投げ捨てた。
「賢二郎……どうした?」
「何が」
「こっちこいよ、なんかおかしいって」
「おかしくない」
バレたらどうなる? もうこれ以上関わられなくなる? 精々トスを上げるくらいか。そんな小さな接点しか持てないのなら、絶対にバレないでいる方がいい。
頼む、気づかないでくれ。
「賢二郎」
先程迄遠い所にあった声と体温が、至近距離距離まで近づく。大きくてゴツゴツとした手が、肩に触れた。
「なんっ……だよっ……!!」
非があるのは自分で、太一に怒るのはおかしい。それを理解していても、ボタボタ落ちる涙と眉間に籠った力は抜けなかった。俺の顔を見た太一は一度苦しげに眉を潜める。
「落ち着けって」
そういうと、体が不自然な程暖まった。
子供あやすように俺を抱きしめ、頭を撫でる。
「離せっ__!!」
突き飛ばすと同時に、俺の力でははなれないはずの太一が離れた。離してくれたのだろう。
謝らなければという思考より先に、逃げたいという衝動が勝ってしまう。
どうしようもなかった。
◇ ◆ ◇
「……」
ぬるい風が頬を撫でる。じっとりと絡みつき、どうしても心地良いとは言えないが、今はこの方がいい気がした。
不快感に身を委ねておけば、先程の出来事は忘れられる。
「……あれ、白布?」
唐突に自分の名前を呼ばれ、ビクリと肩が跳ねる。
「瀬見、さん……」
近場のコンビニにでも行ってきたのだろう。ビニール袋を持ってこちらを見る瀬見さんが、俺が顔をあげるなりギョッとした。
「えっなに、どうしたんだよ? 辛いことあったか?」
「……いえ、別にそういう訳では」
「バカお前、じゃなかったら入浴時間にんな暗い顔して道端歩くわけねぇだろ。わざわざ風呂に必要な道具持って」
たしかにそうだ。風呂には行けないと銭湯へ行こうとして、道具一式を持ってきた状態で何もないと言われても信憑性がない。無料で入れるのにわざわざ1人で銭湯向かうんだ。バカ以外の何者でもないだろう。
黙りこくった俺をみて瀬見さんは1つため息をつくと、俺を引っ張る。
「え、ちょ、何ですか」
「俺も風呂入りそびれたから銭湯行くとこだったんだ。一緒に行こうぜ」
「行こうぜって……もう連れてってるじゃありませんか」
「まあな」
にっと笑って見せるも、そのまますたすたと歩いて行ってしまう。為す術なくそのまま銭湯へと歩いて行った。
◇ ◆ ◇
「はーっ、疲れ取れるわ!」
「おっさんですか」
「ちっげーよバレーの後なんだから普通だろ!」
「あー、そうですか」
「かぁーいくねぇなお前は〜!!」
その言葉に少しむっとする。
「どうせ、可愛くありませんよ」
男なんだか当たり前だ。太一も男で可愛げのないやつより、可愛くて小さい女子の方がいいのは明白だ。
「……川西の事になると可愛げあんだけどな……」
「っはぁ!?」
ぼそっとした声に驚き、水飛沫をあげて少し後ずさる。
「やば、声っ……」
「なんっ何言ってるんですか殴りますよ!?」
「ちょ、落ち着けって!! 悪かったから!!」
呼吸を整えながら元いた位置に戻ると、なんだか体温が上がった気がする。
「いや、まあ正直に言おう。お前が川西を好きなのはなんとなくわかってる」
今の一言でなんとなくそうだろうということはわかった。だが別のことが懸念される。
「せ、せみさ、まって、それたいちにっ……!!」
震える手を瀬見さんの肩に置くと、逆に頭を撫でられた。
「だから落ち着けって。言ってねぇよ。多分気づいてるのは俺と覚と獅音ぐらいだろ」
「そんなにですか……」
「まあ、白鳥沢でそれならすくねぇ方だろ。よく隠してるよ」
確かに、あの人数で3人なら少ない方か。
そう考えると少し気が楽になる。
「……気持ち悪いとか、思わないんですか」
「思わねぇよ」
食い気味に言われ、どうせ適当なことを言っているのだろうと瀬見さんを見ると、真剣な様子をしていた。
「お前らや俺に無理矢理言い寄ってくるような奴なら気持ちわりぃし殴りたくもなるけどな。お前のはただの恋だろ」
「……」
1つため息を吐いて、「そういうとこですよ」と小さく付け足した。
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