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便利屋と情報屋【1】
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鴉が飛び立った。
僕の服には血が飛び散った。
目の前のターゲットはもう、息をしていない。
仕事終了のお知らせをするため、リーダーに電話をかける。
「…もしもし?ももちゃん?…うん。無事、殺したよ。……次?…えー…。分かった分かった!情報買ってくればいいんでしょ?!全く人使い荒いんだから…」
リーダーのももちゃんは相変わらず、効率重視というか、なんというか…。まあ、便利屋は僕とももちゃんとばくちゃんの3人だけだから、忙しいのは仕方ないんだけどね。
「…一度、基地に戻るかー…」
ももちゃんは、基地に帰る道中で情報を買ってこいって言ってたけど、僕にも準備というものがあるので、言いつけを無視して基地に戻ることにした。
ごめんね、ももちゃん!
僕が所属している便利屋は、またの名、何でも屋。2XXX年の現在、世界平和どころか、世界全体での貧富格差が拡大し、国は栄えた街とスラム街の2色にはっきり別れた。
僕たちの基地がある“元”フランスは、58年前、ヨーロッパの国々と合併して、なんとヨーロッパ国という1つの国になった。
ヨーロッパ国は世界の中でも特に貧富格差がひどく、中心部は栄え、貴族と呼ばれる者が好き勝手生活している。しかし、中心部を囲うようにして貧民街があり、酷いところでは道端で死体が転がっているなど、日常茶飯事だ。
僕たちの基地は、その貧民街の端、路地裏の小さな花屋の地下にある。
なんの抵抗も無く、堂々と花屋“Aide”の扉を開く。
レジの前に立っていた店員さんが、顔をしかめる。
「…ったく、裏から入れって言ってるだろうが。喰」
「ももちゃんが今日の店番かー!どう?お客さんは来る?」
「話を聞け。……“普通の客”なんて来るわけ無いだろう。こんな路地裏の花屋にな。…それで?情報は?」
低めの身長。綺麗な黒髪。整った…そして、少しだけ子供っぽい顔。こんな治安の悪い場所には不釣り合いの彼こそ、便利屋のリーダーで“作戦立案・基地防衛”担当の桃ちゃんだ。
アジアの出身で「桃」と書いて「たお」と読むらしいけど、僕はそのまま「もも」ちゃんと呼んでいる。
「シャワー浴びてから行こうと思ってさ!…次の仕事以外に必要な情報とかあったら言ってね」
「ん。今はない。頼んだぞ」
「はーい」
レジの後ろの扉を開くと、地下に続く階段が現れる。その階段を下ると僕たちの基地だ。
馴れた廊下を進むと、宇宙船のような近未来的な世界が広がる。あちらこちらにあるモニター。赤外線レーザー。監視カメラに大量の電子機器。すべてももちゃんの発明だ。
ももちゃんはこの様々な機械で計算して、完璧な作戦を立ててくれる。それを僕とばくちゃんが遂行するんだ。
そうこうしていると、廊下の前からばくちゃんが歩いてきた。
「よぉ、喰。仕事終わりか?」
「まぁね!これから情報屋さんのところに行くけど」
「またお前抱かれに行くのかよ?金で解決すりゃ早いのにな」
金色のツンツンした髪に黒いパーカー。ニヤリと笑うと犬歯が見える。そして猫のようなつり目。綺麗な顔。
彼が便利屋の“破壊・殲滅”担当の獏ちゃんだ。彼は戦闘のエキスパートで、どんな武器も使いこなせる。…ただ、見てて悪寒が走るほどの戦闘狂でマシンガンやロケットランチャーで敵の基地をボロボロに破壊するまで進撃を止めない、困った子だ。
一度、スイッチが入ると満足するまで破壊活動をする。
故に、暗殺の任務は僕が担当している。僕の名前は喰。便利屋の“暗躍・情報収集”係だ。
「僕もお金で解決したいけどさ…」
「まっ、頑張れよ!俺は今から武器のメンテに行ってくるから」
「あー、鍛冶屋さんのとこ?」
「…あぁ」
ばくちゃんは少し顔を赤くすると、短く返事をして黙った。僕は思わず笑って、ばくちゃんの肩を叩いてその場を後にした。
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