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入学式
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『パパパパーーッ、パ、パ、パ』
耳を突き抜けるトロンボーンの音
続くようにドン、ドンと太鼓の音が一定のリズムを刻む
吹奏楽部の華やかな演奏に迎えられ、真新しい制服に身を包んだ新入生たちが体育館から流れ出る
まだ幼さの残る顔が少しの緊張と期待に揺れていた
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「...」
人、人、人。
4月、成北(なりきた)高校入学式
式後の体育館前は新入生やその家族、部活動の勧誘に奮闘する2、3年生で揉みくちゃ、お祭り騒ぎだ
「サッカー部入りませんかー!」
「バレー部入らない?部員全員仲良くやってるよ!」
「柔道部!心と体を鍛えましょう!」
去年はこの人混みに耐えられなくて帰ったっけ
自分が入学した日のことを思い出しながら、パネル片手に人々の隙間を縫うように歩く
「バスケ部、どうすかー」
「おい陸!もっと元気にやれよ」
「やってるよ」
「嘘つけ。やる気が感じられん」
「うるせーなー...」
ジャン負けで勧誘係を押し付けられて、快くできるかよ
同じく部の勧誘に励む友人からの喝を聞き流しながら、時間が過ぎるのをただ待っていた
「こんなん、勧誘しなくても入るって......いてっ」
ブツブツ文句をこぼしながら歩いていると、何かにぶつかった
「あ、すんません...」
謝りつつ顔を上げると、日を遮るほど大きな男が立っていた
身長174cmの俺の顔に影が落ちる
「(でか...)」
男は少し驚いた顔をしたが、すぐに凛とした表情をこちらに向けた
キリッと太い眉に、横側が短く刈り上げられた髪の毛
真っ黒な瞳が重い空気を放っている
こいつは堅物だな。冗談が通じないタイプ
シワ一つない制服
新入生か
「え、と......バスケ部、どう?」
「.........柔道部入るんで」
「あ、そ」
男はバスケ部と書かれたパネルをチラリと見たが、さほど興味も無さそうにサラリと断った
2mも軽く超えてしまいそうなほどの高身長、がっしりとした体格
バスケ部に連れていけば顧問が大喜びしただろう
男は視線を俺から外すと黙ってクラス表を見つめる
これ以上話すこともないので、俺はパネルを持ち直し、くるりと向きを変えて相変わらず気乗りしない声で勧誘を再開した
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