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春 Ⅴ
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「あ、あー···まじ、ですか」
「ほんとすまん···」
先生がいかにも申し訳ないって顔で謝ってくるので、本当はものすごくとても反論したい気分だったのを抑えて俺のつくれる精一杯のいい笑顔で「大丈夫です!」と言い安心させた。
「いや、そんな変な顔してまで気使わなくていいんだぞ」
「いやほんとにだいじょ···って変な顔?嘘?俺今変な顔してました?」
「え?してなかったか?」
···にしてもマジでいい加減にして欲しいぜ!ほんと!
先生が小声で「変な顔···してたよな···」と言ってるのは気にしない。断じてしてないからな。
「あ、ぁ、あの、じゃあ、ぼ、ぼ僕が部屋に案内しますね」
先生と共に悶々としていると、先生の後ろにいたメガネの髪を後ろで束ねている優しげな雰囲気の男の人が、噛み噛みな日本語で声をかけてきた。
「じゃ、頼んだぞ。前川、俺は職員室にいるから、用意が終わったら来てくれ」
そう言って山田先生は俺の頭をぽんぽんと撫で、またもう一度「すまんな」と謝ると、来た道を戻っていった。アディオスイケメン山田。もとい山田先生よ。共に強く生きようじゃないか。
「ぁ、えっと、ぼ、ぼぼ、僕の名前は、さ、坂本七葉です!」
「俺は前川宗太です!よろしくお願いします、坂本さん」
「こ、こここちらこそ、よ、宜しくね!ま、まま前川くん···!」
にしてもすげぇ噛むな。顔はすごいかっこいいのに、自信の無い感じが顔にまで出てる。勿体ない。
坂本さんと俺は、無駄にデカイ寮を少しだけ早歩きで移動した。(というか坂本さんが歩くの早かった)
暫く歩いたあと、坂本さんは【331】と刻まれたプレートのついた部屋の前で足を止めこちらを振り向いた。
「····あ、ああああのね、もし中にいる人たちに何か言われても、む、無視したらいいから!じ、じじゃあね!」
「えっ、ちょっ」
坂本さんはそれだけ言い残し、足早に去っていった。
····やっぱり俺の同室、っていうか、もうひとりの外部生、只者ではないな。一体どれほど恐ろしいというのか。フッ···面白いじゃあないか!
俺は心を落ち着かせるために一度深呼吸した。
よ、よし、開けるぞ!開けちゃうからな!フリじゃないぞ!!ほんとに開けちゃうからな!!
ゆっくりとドアノブに手を伸ばし重たいドアを開け─────····
「や、やめろ、はなせ────ッ!!」
「っ─?!」
ドアを開けた瞬間、部屋の中から耳を劈くような叫び声が聞こえた。
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