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黒の目的 2
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「少し話してもいいか?」
「あ、はい…。すいません、勝手に部屋に戻ってしまって…」
「いや、いい。気にするな」
フッと微笑んで、トウヤさんがカップを手に取る。一口飲んで、僕にも飲むように勧めてきた。
僕も温かいカップを持って、紅茶を口に含む。鼻に抜ける柑橘系の香りが、僕の気持ちを落ち着かせてくれる。
僕が小さく息を吐いたのを見て、トウヤさんが口を開いた。
「まずは我が黒条家について、話そうと思う。聞いてくれるか?」
「黒条家…」
僕は小さく呟いて、トウヤさんの目を見て頷いた。
「今や人狼界では忘れ去られてしまった黒条の名前だが、五百年前には、四大名家やその他の人狼族を従える、人狼界の頂点に立つ一族だった」
「…五百年前…」
「ふっ、遥か大昔の話だがな。人狼界トップの一族として、かなり他の人狼族を蔑ろにした行いをしていたらしい。お陰で煙たがられてしまった黒条家は、罠に嵌められて、トップでいられた理由のモノを消されてしまった。そして、人狼界の端に追いやられてしまったのだ」
「罠に…」
一瞬、昨日のロウの姿を思い出して、ブルリと身体を震わせる。
手に持ったままだった温かい紅茶を、コクリと飲む。カップをテーブルに戻して、僕は尋ねた。
「あの…、そんなに他の一族から煙たがられることって、何を…」
「俺も何があったのかまでは知らない。傍若無人で非情なことをしてたんだろう。まあ、絶対的な力があったのだから、驕ってしまったのも仕方がない」
トウヤさんもカップを手に取り、残っていた紅茶を一気に飲み干す。そして、フッと目を細めて僕を見た。
「バカな一族だと思うだろう?その後黒条家は、何百年も人狼界の隅で、細々と真面目に過ごして来た。でも、元々は由緒ある一族だ。もう一度、四大名家と並びたいという強い思いも常にあった。だが、到底四大名家やその他の一族が認めるわけはない。どうしたものかと悩んでいる時に、ルカの噂を聞いた」
「…僕の?名門青蓮家の生まれでありながら、狼に変身出来ないという噂?」
「そうだ。それを初めて聞いたのは、今から八年前だ。ただ、変身の時期が遅れてるだけなのか、本当に変身出来ないのかがはっきりしない。だから、もう数年様子を見ていた。で、本当に変身出来ないという事がわかって、俺は歓喜したよ」
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