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窮鼠状態
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時はほんの少しばかり遡る。
健全な学生生活を送っていた俺が愛する我が家へ帰ろうとしていると、門前に知らないお客様たちがいた。
それが彼らである。
なぜ俺の家に?
そしてなぜ複数名?
色々伺いたいことはあったが、何よりも。
「アッ、あいつですよ『コタニ』!!」
「おし・・・おら待てやゴルァアアア!!!」
「金払わんかィイイイイ!!!!」
「!!?」
そして今に至る。
ここんとこ数日、よく逃げたと思うよ。
つか人間やろうとおもえばできるもんだな。
状況を理解していなくても、追われたら逃げるという逃走本能が俺にあって良かったと心から思う。
ナイス俺。俺の中で俺の好感度が一気に上がってるぞ。これは人気投票上位に食い込むレベルだ。
しかしながら、高校生活と共に俺は、一人暮らしという幼少期からの夢をこの手に掴んでしまっていた。
これ以上ここにいると近隣住民の方々に申し訳ない。居た堪れない。
そんな感じで俺は自宅、マイスウィート(ボロ)アパートを飛び出し、着の身着のまま逃亡を続けていたわけで。
そんな俺の逃亡生活もやっと終わりを迎えそうだ。
・・・最悪のカタチで。
いや、でも待てよ。
そもそもなんの借金だよ。
マジで俺にはそんなもの背負った(しょった)憶えがない。
そんな金をどうして俺が払わなくてはならんのだ。
ただでさえ貧困した生活を送っているのに、これ以上搾取されてたまるか。
こりゃあ一揆だ!お役所に抗議するべ!!!
「いいからとっとと払え、指詰めんぞ」
だがしかしお侍さんは厳しかった。
厳しいっていうか冷徹なんですけど。
救いようがないんですけど。
話聞いてくれないし。
何か泣けてきたぜチクショウ。
「・・・しつけーなぁ・・・いい加減にしろよ」
そしてお侍さん、もとい893のお兄さんはとうとうしびれを切らして低音を響かせだした。
あ、アカンやつや。
これアカンやつや。
「テメェが借金してるっつってんだろ・・・ウチの金融からお前が金借りてんだよ・・・それを今更知りませんでしたでそうですかって引き下がれるかよ・・・あ”?」
日本では恐らく聞いたことのない音を発して、お兄さんは凄む。
その威圧感に圧されて、後ろに後ずさってみても、
ガシャーン。
「っ・・・!」
後ろの錆びたフェンスに背を預ける形になるだけだった。
こんな頼りないものに背中守られても。
つか錆が付くから離れたい。
そんな、フェンスに一瞬気を取られていた俺の頬に、何か冷たいものが触れた。
「・・・?」
それは―その冷たく月明りを反射するその銀色のソレは
「・・・!」
俺を震え上がらせるには十分だったし、俺の命を奪うのにも十分だった。
「・・・指だけじゃなくて、首でも切られてえか?」
・・・なんて言うんだろう、ジャックナイフ?を頬にピトリと当てられて、意図せずにフリーズした。
「っはぁ・・・!!はぁ・・・!!」
冷や汗が体中を伝い落ち、呼吸が急速に乱れる。
走ったからの乱れではない。
命が危険にさらされていることを感じ取っての本能的なやつだ。
うまく呼吸ができなくなってきて、過呼吸気味になってきた。
あれ、呼吸ってどうやってやるんだっけ。
「今ある有り金全部出せ」
意識が朦朧(もうろう)としてきたが、それでもこの金だけは渡せなかった。
「だ、だめだ・・・この金は・・・これは・・・」
そう小さく呟きながら、呼吸を整える。
大丈夫だ、活路は、見えた。
「今週発売の新作ゲームの為の金だぁああああああ!!!!」
大声で吼えながら(奇声を発しながらでも可)ジャックナイフ男の脇をすり抜ける。
突進に近かったが、それでもジャックナイフを怯ませるには十分だった。
よし、逃げた。
そう安心したのもつかの間。
「・・・オイゴラ・・・どこ行くつもりだゴラ」
ガッシリと俺の腕はジャックナイフに捕まっていた。
逃げられず。
<***>
一瞬勝ちフラグ来たかも、と思ったが、案の定ゲームとか映画とかに付き物の『安心させといてドキっ☆』っとかいうやつにやられてしまった。
そして簡単に俺は再度捕まり、工場の倉庫の外壁に身体を押し付けられた。
叩きつけられたともいう。
背中を中心に全身にくる痛みに顔をしかめるが、ナイフ男は依然として俺を威圧してくる。
まあ今はナイフすら使ってこないんでナイフ男とも呼べないわけだが。
「だから・・・本当に俺知らないんですって・・・大体、いくら借金してるんですか・・・?」
(元)ナイフ男は悠長にタバコを吸いだした。
俺を片手で取り押さえながら余裕である。
というか、近いんでタバコの煙が当たって煙いんですけど。
やめていただけないだろうか。
少し唇を噛んで睨んでみる。
へんじがない ただのヤクザのようだ。
ったく、とんだ災難だ。
家にもそろそろ帰りたいし。
「300万」
・・・は?
え、は・・・?
300万?300万?300万?300万?
合わせて1200万?
そんな言葉が一瞬俺の頭を駆け巡る。
この後無茶振りされるんですよねえ?知ってます、知ってます。
「300万だ。利子を入れるともっとあるが・・・。今払えねえってんなら・・・」
「いやいや、いやいやいや!!俺ホントに知らないし!大体、俺みたいな学生が300万とか・・・使わないですってマジで!!」
「そんなの知んねーよ。最近のガキは何に使うのか大金を借りてまで遊ぶやつも少なくねえからな・・・オラ、早く払え」
このままじゃ、マジで払わされかねない。
でも困る。
ただでさえ貧困生活してんのに、それを切り詰めて作ったゲーム代までカツアゲされちゃ、俺ァこっから何を楽しみに生きていけばいいんだよ・・・。
ふつふつと、怒りが湧き上がる。
なんというか、理不尽すぎて、逆に腹立ってきた。
つか違うっていってんじゃねえか。
この金も渡せねえんだって。
高校も別に奨学金も使ってねえし。
奨学金ってこんなイカついやつじゃねえはずだしな。
「ああああ、もう!!」
「あ”?」
もう、どうにでもなれだ。
「だから!俺じゃないんだって!!!!」
・・・火事場の馬鹿力って、知ってるだろうか。
ピンチの時に出るとかいう、なんか通常時にはありえんくらいのパワーのことだ。
人間マジで理解できないときとか、キレたときって、なんか変な力が出たりするけど、それが今、出た。
「・・・お前」
「はぁ・・・はぁ・・・なん、だよ・・・」
全力シャウトで息切れする俺。
・・・を顎クイするヤクザ。
「・・・見逃してやるから、身体で払え」
火事場の馬鹿力でフェロモンが出ました。
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