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ほとんど隠匿
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その日は俺の部屋に竹垣さんを移し、俺と柏原さんで面倒をみた。
次の日から俺は一人で竹垣さんの看病をみてやることにした。
もちろん柏原さんには猛反対されたけど(ゆーすけくんがやるくらいなら俺がやるとも言われたけど)、何とかなだめた。
まあ、俺自身、あんまりこの人に危機感というか、危害を加えられる気はしないのだから仕方ない。
「・・・ケガ、治るまでの間ですから」
そうぶっきらぼうに伝えると
「・・・そう、か・・・じゃあ、このケガが治らなければいいのにな」
なんて恥ずかしそうに、切なそうに言ったりするもんだから、俺もちょっとだけ絆された(ほだされた)のかもしれない。
ギャップのせいだ。うん。
でもまあ、俺も俺で甲斐甲斐しく世話してやってたわけで。
日中は学校があるから何もできないけど、学校から帰ってきたら、包帯取り換えてあげたり、質素なお粥食わせてやったりして、知らない男のために尽力してやったのだ。
何やかんやで五日くらい。
その頃にはだいぶケガも癒えてきていた。
んで、ある日俺が家に帰ると
「ただいまー」
「おかえり」
こういう、まあちょっと俺としては不思議なやりとりには慣れつつあったんだけど、何よりも問題は
「え、ちょ、これ竹垣さんがやったの!?」
「あ、あぁ・・・そうだが・・・マズかったか?」
「・・・いえ、全然」
俺の部屋は綺麗に掃除されていて、軽く家具の位置とかも変わっててリフォームされたみたいになっていた。
俺の部屋はかなーり殺風景な必要最低限のみが存在を許されたような部屋なんだけど、それがこうも変わるとは。
侮りがたし、配置。
何かポ●モンのひみつきち思い出した。俺は世代的にシンオウ地方をちょっと。
・・・脱線した。
さらに中央の卓袱台の上には美味しそうなご飯が二つ。
「竹垣さん、家事できるんだな・・・」
すげー意外だった。
こんなコワモテの男が一人、居候している相手の部屋を掃除して飯作ったんだと考えると、何だか笑えてきた。
なんてシュールなんだ。
「ありがとう竹垣さん!!こんな美味しそうなの柏原さん以外に初めて見たかも」
急いで制服を脱ぎながら言う。
竹垣さんはサッと視線をそらしながら
「柏原さんって・・・」
「助けてくれたお隣さん。あの人も料理上手いんだよ。だから結構助けてもらってる」
「そうか・・・」
少し考えるような声音だった。
でもそんなことはどうでもいい。
俺は久し振りに食べられるちゃんとした食事を早く口にしたかった。
「食べよ!いっただきます!!」
「・・・頂きます」
すげー美味かった。
ちょっと感動するくらいだった。
でも、そういうことだ。
もう家事ができるくらいまで快復しているのだ。
柏原さんに言われた通り、これ以上この人と関わるのは止めた方がいいだろう。
元々ケガが治るまでの約束なのだから。
まぁ、ほんの少しだけ、この味が食べられなくなるのがもったいない気がしたけれど。
<***>
「お風呂、入っちゃってください」
「あ、ああ。助かる」
俺が先に風呂に入って、後から竹垣さん。
最初は俺が風呂入んの手伝うって言ってたんだけど、固辞された。
身体拭くのも固辞されたんで、傷だらけの身体ですげー苦しみながら一人で身体拭いたり風呂入ったりしてた。
んで、ここ数日はずっとこのカタチ。
ボーっとテレビを見ながら待っていると、10分くらいで竹垣さんは出てきた。
結構『カラス』なのだ。
「風呂、あがった。風呂掃除しておくから」
「あ、良いんですけど別に・・・」
そう返事しながら振り返ってふと。
その、タオルを腰に巻いた状態で見える、素晴らしくたくましく筋肉が素敵な肉体美を一瞬見て。
「・・・あの、竹垣さん。『ソレ』消えないんですよね・・・?」
ソレ・・・身体に彫られた刺青(いれずみ)を指さして言う。
そうだった・・・。
「・・・そうだな。少なくとも俺は消す方法を知らん」
んんんん。
どうしようかな。
だって思いっきり桜吹雪いてるもん。
鯉は龍にすくすくと成長してるもん。
腕とか足先の方とか、そういう見て分かるところにはないんだけど、背中と太腿(ふともも)辺りにしっかり入っている。
冷静に考えて。
1.この人が俺の家を追い出される
2.身寄りとお金がないので安アパートを賃借
3.安いってことは風呂もなかったりする
ということはつまり。
4.銭湯に行くしかない
・・・入れねーな、この人。
俺昔骨折して風呂に入れなかったことがあるから分かるんだけど、風呂に入れないって辛すぎるぞ。
「ちなみに、なんですけど。住むところの目星はついてるんですか?」
とりあえず訊いてみよう。
もしかしたら高層マンションの最上階とかに住む予定かもしれないからな!
「ああ、一応探してはいるが。とはいえ今のところ金も何もねえし、安いボロアパートになりそうだがな」
ですよねー。
「お風呂とかは?」
「ついてないな。トイレは共用だそうだ」
ですよねー!
ああ・・・。
絶対柏原さんに怒られるだろうな・・・。
「竹垣さん・・・ここにいても良いですよ」
「・・・え、でも」
驚いている。
そして誰より俺が一番驚いている!
「お、俺だって、本当は可愛い女の子と一緒に暮らしたいですけど・・・!でもまあ、ご飯、美味しかったんで・・・仕方なくですよ?」
チラリと顔を見ると
「だ、だけど・・・本当に良いのか・・・?」
「い、嫌ならいいです!」
「嫌じゃねえ!嫌じゃねえけど・・・ちょっと嬉しいというか・・・驚いて」
その突然の大声に俺は驚いていますが。
つか嬉しいってなんだ。ちょっと頬染めんなバカ。
「分かった。じゃあ家事はする。それから、家賃も俺が工面する」
突然すげえ事言い出したぞ。
「いや、良いですよそこまで。それじゃあお家借りるのと変わらないじゃないですか。家事は助かりますけど」
正直それで十分ですけど。
「いや、普通に家借りるのとは違えよ。お前がいるからな」
「は・・・」
この人、本気で俺に何かしらの好意を抱いてしまっているらしい。
一度病院を紹介する方がいいだろうか。
「俺の気が済まないからやるんだ。気にすんな」
そう言って竹垣さんは俺の頭を撫でた。
「あ、の・・・」
そして俺が反応するより早く
「あ・・・!いや、悪い。他意はない」
そう、照れながら手を引っ込めるのであった。
じゃあすんなよ・・・。
「・・・じゃあ、その辺りはお任せします」
「任せろ、バイトも増やすつもりだったから」
突然居候を手に入れてしまった・・・。
まあ正式に同居人になるわけだ。
挨拶はしておこう、人として。
「これからよろしくお願いします、竹垣さん」
ペコ、と頭を下げて言うと、竹垣さんは少し表情を曇らせた。
「その『竹垣』って呼ぶの、やめてくれねえか」
「はい?」
アンタがそう名乗ったんでしょうが。
しかも今更かよ。
「じゃあなんて呼べばいいんですか?てか何で嫌なんですか」
とりあえず質問を畳みかけてみた。
「・・・竹垣ってのは、極道に入るときに兄貴分につけてもらった名前だ。でも、もう俺は極道じゃねえ。当時の兄貴分も今はいねえし関係ねえんだよ」
兄貴分がなぜいないのかは追究すると怖そうなのでやめておこうと思う。
「本当の名前は?」
これは訊いても構わないだろう。
「・・・久我龍治(くがりゅうじ)だ」
「久我さんっていうの?かっけーな」
「!!・・・そう、か?」
「おう!久我さん、ね。じゃあこれからそう呼びますよ」
竹垣さん、改め久我さんはちょっと赤くなりながら頷き、
「それから、敬語も使わなくてもいい」
そう言った。
ま、これからいつまでかは分かんねえけど、そうだな。
敬語の同居人ってのは逆に気を遣うのかもな。
「分かった。一応心がけますよ」
「そうしてくれ」
そんなこんなで、俺は元極道と同居することになったのであった。
もちろん、後日それを知った柏原さんにコッテリ絞られることになるんだけどな。
それはまた後で。
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