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先生「呪いの言葉」
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翌日。
久し振りの登校ではないだろうか。
ここんとこずっとバタバタと立て込んでいて、加えて多方面から拉致られたりしてたからなあ・・・。
軽く新聞に載っても何らおかしくない状況だったぞ、マジで。
そういえば、あのヤクザ達は結局どうなったんだろうか。
恐ろしくて聞けやしないけど。
しかしだ。
出席日数とかいう、極めて現実的な問題のために俺は登校を余儀なくされているのである。
例え、ごく普通の男子高校生がヤクザに追われようが、告白されようが、同居しようが、
学校というものは素晴らしく何もないように機能し続けている。
実際、何もないのだけど。
人は世界を回す歯車だとかいうけれど、それは希望論に近くて
実際は、人ひとりいなくても世界は十分機能するし、代わりは十二分に存在しまくっている。
歯車は歯車でも、使い捨ての、しかも末端の末端に取り付けられた、駄菓子のおまけみたいな存在なのだろう。
でもそれは、世界とか社会とか、ああいうものの話だ。
人、個人の話になれば、歯車どころでは済まないのだろう。
その人を原動力に動いている人間が、この世にどれだけいるだろうか。
代用の利かない、一点物として扱う人がどれだけいるだろうか。
少なくとも、俺の傍には二名、確実に存在していたりして。
昨日、宣言通り柏原さんに構い倒されたことを思い出して、苦笑する。
柏原さんのご飯を久し振りに食べた。
心の底から美味しかった。
久我さんのと比べることはできないけど。どっちも美味しすぎるから。
結局、5時30分頃に久我さんがバイトから帰ってきて、晩御飯を頂いて、9時頃には自室に戻った。
とはいえ隣なんだけど。
俺が寝るまで、久我さんはずっと傍にいて俺を見ていた。
寝苦しかった。
それでも人間というものはたくましく、「やあ」と言わんばかりにやってきた睡眠の闇に吸い込まれる直前
「ごめん」
そう聞こえたのは多分、気のせいではない。
久我さんはこれから、少なくともしばらくはこの一件をひきずって、後悔し続けて、俺に引け目を感じるんだろうなあ、と思うと不憫だったけど、
しょうがない、久我さんは多分そういう人なんだろう。
なんて、一人でそんなことを考えていたら、いつの間にか我が学び舎に到着していた。
<***>
もうこなれてきたもので、多少であれば休み明けでも臆さずに教室に入ることができるメンタルを所持している。
アイテム:鉄の心臓 だ。
まあ、装備していないと効果はないんだけど。
「うわ、久し振りだな不登校!!」
「こんなに明るい不登校はなかなかいないだろ」
いきなり軽口を叩いてきた友人(多分幼馴染にトラウマでもある彼)に適当に返しながら、自分の席に着く。
いや、着こうとして、そこに違うカバンが下がっているのを見てうろたえた。
そんな俺の挙動を見て、友人は
「あ、そうだ。席替えしたんだよ三日前くらいに」
そう言った。
「席替え」
「そうそう」
じゃあ、俺の席はいずこへ。
教室前方にある教卓の上には、教科によって変わる先生用に座席表が貼られている。
確かにその紙は更新されていた。
俺が自分の名前を探していると
「そうなんだよ。転校生が来て、それでちょうど良いからって」
何が良かったんだろう。
っていうか
「転校生?」
これまた急に。
首を回して教室を見渡すが、それらしき顔はない。
みんなある程度見知った、クラスメイトだ。
「東谷 弥太郎(あずまや やたろう)っていう奴で、関西出身らしいけど、なあんか、性格に難ありっていうか・・・」
その言葉に適当に相槌を打ちながら、更に座席表に向けた視線を滑らせる。
「あ、これだ」
やっと見つけた、窓際から二列目、一番後ろの席。
「隣は・・・」
その言葉を発した時、ガラリと教室の引き戸が開いて生徒が入ってきた。
その瞬間、その一瞬。
クラスメイトの会話や喧騒がピタリと止まった。
そいつはムスッとした表情で教室内をまっすぐ歩くと、一番後ろ、窓際の席にカバンを置いた。
「・・・あいつだよ」
再びフェードインしだした教室の喧騒と共に。
俺の視線の先、俺の隣の席に書かれた名前がー見知らぬ、さっき聞いたばかりの名前が、真新しい感じに書かれていた。
<***>
HR。
席替えなんてものを画策した(つか実行した)担任が、どこか楽しそうに言い出した。
「今日から調べ学習をしたいと思います。個々人ではなく、仲間と協力し合って、一つの課題をすることに意味がありますからね!では」
基本、何かにつけて『仲間』『協力』『絆』と言う
絶対、『ご◯せん』とか『金◯先生』とか見てただろって感じの、熱血っぽい女性教師(担任)は、皆さまお察しにして、最大の恐れを抱くであろう、あの恐怖の呪いの言葉を口にしたのである。
「好きな人と二人組になってー!」
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