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子供見守り機能を脱した瞬間がこちらです
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考えてみれば、保護者的立ち位置の人がいないっていうのはかなり久し振りなんじゃないだろうか。
一人暮らし初日から隣人のイケメンにはお世話になっているし、今では同居人のイケメンにもお世話になっている。
ありがたい話だが、同世代の奴らと一緒にバカ騒ぎするっていう構図は久し振りじゃないだろうか。
いつもと違うことは、楽しい。
ここでバスがやっと目的地に到着した。
やっとっていうか、予定通りなんだけどな。
さすがプロ。
先生がマイクでここからの日程を伝えていく。
タイムスケジュールがキッチリ決まっているのがこういう学校の宿泊イベントの難点だけど、まあそれでも基本的には自由行動だ。
嬉しい。
「え~、静かに!しーずーかーに。はい、ここからバスを降りて広場に集まった後、班別行動になります。先日確認した通りの班のメンバーで行動してください。しおりにも書いていますので、各自確認してください!詳細はバスを降りてから全体にアナウンスが入ります。しっかり聞いてください。それではバスを降りますが、まずは1号車からですので少しこのまま待機します!」
ちなみに俺らは2号車である。
隣に座っているやたは眉間にしわを寄せてはいたけど、それが初期装備だったりするので機嫌が悪いとかではないようだ。
俺ほどになるとそれが分かる。
・・・だからこそこうしてニコイチにされてるんだろうけどな。
でも別にやたは誰かれ構わず天邪鬼なのではなくて、先生とかにはちゃんと素直に応対できるのでそこまで問題視されてないと思うけどな?
むしろ真面目で勉強もできるやたは先生からは比較的優等生的ポジションとして捉えられている気が・・・。
・・・なんか今嫌な想像というか、悪い予感みたいなのがたったけど気のせいだろう。
そういうことにしておこう。
先生は運転手さんにお礼を言っている。
お疲れ様です、ありがとうございます。
いえいえ、楽しんできてください。
みたいな会話が、生徒たちのハイテンションボイスの隙間から聞こえてくる。
「はい、2号車降ります!!後ろの席に座っている人から順に降りて下さーい!忘れ物ないかチェックしてねー!!」
今日も吉田先生は声を張り上げている。
大変そうだ。
宮井と金下たちも立ち上がり、バスを降りて。
そして俺たちの番。
俺は窓側だったけどやたにしれっと順番を譲られて、先に降りる。
そしてその俺の後ろで先生がやたに話しかけているのが聞こえた。
「じゃあ、東谷君。児谷君のことよろしくね」
や っ ぱ り 俺 の 方 が 問 題 児 扱 い さ れ て た か!!!!!!!
<***>
結局は保護者ってことになるんだろうか、東谷は。
マジ俺社会的信頼ないな。
広場・・・バスを止めた大きな駐車場から少し行った先にある名前のままの広場で俺ら学年は全員集められ、学年主任の先生から改めて注意と時間の確認が入った。
その後は自由行動だ。
この商店街というか、個店の多い場所で、お土産を早々に買い求めるもよし、お昼ご飯を各々でとるもよし、の時間である。
まずは宮井&金下班と合流する。
「で、どうするよ。昼飯にしてもちょっと早いか?」
「せやな」
金下の言葉に素直に頷くやた。
「今11時過ぎだもんな。集合何時だっけ」
「1時って言ってたやろ、覚えとけや」
俺には冷たいやた。
・・・(´Д⊂グスン
まあ、俺がこうやって凹むと、やたはちょっと心配そうな顔をするんだけどな。
心配するくらいなら優しくする努力をしろよ。
「じゃあえーっと、まずはその辺まわってみるか!」
金下が明るくまとめる。
基本的に気が付けば中心で物事を回していることが多い奴である。
「そうだな。あとマップにあるこの幸せの鐘って気になる」
冷静な話口調だが実はボケ気質の宮井。
ちなみにオシャレ眼鏡野郎である。
「ああ、さっき女子が喋ってた。え、お前そういうの興味あったっけ?」
「何をもって幸せの鐘なのかが知りたい」
「ええ、無粋・・・」
研究者みたいなことを言いながら、あるいは思ってたのとは斜め上に。
宮井はそう言った。
まあ俺たちは別にどうだっていいからな。
その辺りは任せる。
それにこの班行動ではどちらにせよチェックポイントがある。
それを時間内に回らなくてはいけないのだ。
致し方なし。
マップで確認すると、幸せの鐘とやらはチェックポイント4・展望デッキの近くだった。
っていうかこういう○○の鐘とか、幸せの○○とかホントどこにでもあるな。
幸せはすぐ近くにありふれているってことかもしれない。
知らんけど。
展望デッキ。
この字面から想像できる(?)通り、ここはそれなりの高度を有する山の中腹である。
観光客用のお店が軒を並べ、そしてそれらをカm・・・いや、お客様として商売をする、少し高めのお値段設定のご飯処が並んでいる。
それも致し方なし。
こうして四人での行動が始まった。
まあ、広がって歩くなとしおりにも書かれているし、さっき学年主任からも念を押されているので、基本的には二人・二人の二列で固まって歩くような図になるんだけど。
ただ珍しく、隣になる顔はお店を出るたびにくるくると回って、上手く全員と話す機会があった。
グループ行動ってどうしても中で分かれちゃうもんだけど、うまいこと成り立っている。
これがもし先生の先見性だったら天晴というしかない。
今は前列に俺と金下、後列にやたと宮井だ。
正直さながら人見知りの子供を持つ親のような心持だったので、意外とちゃんと受け答えできているらしいことにちょっと感動する。
俺と会話の特訓したからかな!
じゃあ俺の手柄!!!
「そういえば児谷って一人暮らしってマジかよ?」
「ああ、それはマジ」
同居人がいることはシークレットだけど、一人暮らしなのは意外と知られていたりする。
「マジで!良いなー、俺んとこ親がうるさくてさー。早く一人暮らししてー!」
「いやいや、そこまで楽ってことではないかもしれねーけどな?家事とかできんの?」
「それは・・・あの、アレ。カップ麺の湯切りはできる」
「おまwそれ家事に含むなwww」
まあ俺も人のことは言えないけどな。
今は同居人がほとんどのことを請け負ってるし。
そういえば最近はずっとやたと行動を共にしていたから、こうして他の同級生や友達としっかり話すのは久し振りかもしれない。
それもやっぱり楽しい。
後ろでやたも若干のぎこちなさはあるがそれなりに話しているのが聞こえる。
こういうのも、やたには必要でいい刺激になるんじゃないかな。
このまま俺だけじゃなくて、みんなとしっかり仲良くなっていけるならそれに越したことは無い。
友達は一人でも多い方がいいのだから。
そのままメンツがくるくるローテーションを組みながら、チェックポイントを順調に回っていく。
順番が決まっているわけではないので、好きな順番で回ればOKだ。
【チェックポイント1・お土産通り】
駐車場や広場から一番近いところ。
お店が多数並んでいる。
他の生徒も殺到していたので、どうせ帰りに通るし、お土産も買う予定なのでここは一度スルーすることにした。
【チェックポイント2・梢滝(こずえたき)】
滝とは名ばかりの、まるで打たせ湯みたいな水量の滝。
細くてそこまで落差があるわけではないけど、意外と近くで見るとテンションが上がる。
近くにいた先生にしおりにスタンプかサインをもらうことでチェックポイントを回ったことになる。
がんばったね!
と書かれたスタンプを貰って、次のチェックポイントへ。
【チェックポイント3・山道】
そのまま山道。
とはいえ観光客向けの登山道なので、まあまあ歩きやすくはなっているし、基本一本道で迷う感じはあまりない。
ただ疲れる。
でも緑の中を歩くのは自然と気持ちよくなれた。
最近怒涛(どとう)だったからな。
安らぐよ、木々たち。
ここでも途中で立っていた先生に今度はサインをもらった。
OKの走り書き。
数学担当の先生の、課題提出した時の見ましたよサインだった。
で、チェックポイント4・展望デッキ。
一応目的をもってここまでやってきたので、先にチェックだけもらって(バッチリ!のスタンプだった)展望台へ。
展望デッキの上に更に階段が伸びていて、それが展望台になっている。
そこから見える景色は、空の青さと山の緑のコントラストを額縁に、眼下の街並みが見える良い景色だった。
とはいえ他の生徒も来るので、長居はしていられない。
早々に展望台を降りて、デッキの部分に明らかに新しく作りました!
って感じで白い木板で作られている部分、幸せの鐘の元へとやってきた。
<***>
「幸せの鐘。この鐘を鳴らすと仕事や家庭や恋愛で幸せになれるかも!?」
「は~ん」
声に出して傍にあった看板を読んだ金下と、明らかに冷めている宮井。
「いやだってそんな曖昧なことあるか?そりゃ生きてりゃどの方向かでは幸せになるかもしれないだろ」
「まあまあ」
「でも鳴らすけどな」
「鳴らすんかい」
ほとんど集まっていたのが女子だったので若干の居心地の悪さはあるけど、でもここはぜひ、俺も鳴らしておきたい!!!
特に恋愛ってのは気になる!!!
「ほら、やたも!!!」
「いや、俺は・・・」
「なんで!恋愛的にも幸せになれるかもだってよ!?」
「・・・ぁあ、お、ぅ」
ほとんど声にならないような小さい声を発して。
それでもやたは動いた。
やっぱ恋愛とか興味あるんだな。
ちょっと意外っていうか・・・。
いやでも女湯がどうとかいう話題でもそれなりに照れてたしな!
健全でよろしい!!!!
既に宮井と金下は存分に鐘を鳴らしている。
周囲の女子がちょっと引いてるくらい。
多分その恋愛方面での幸せは、ここにいる女子との間では発生しないだろう。
残念だったな。
俺もやたと鐘の下に行って。
で、そこから下がっている紐を握る。
やたも同じように握ってきた。
待つっていう発想は無いんだな。
まあ、一人で鳴らすのも勇気がいるか。
「よし、じゃあ鳴らすぞ!!」
「あのさ、俺・・・」
「え?」
カランカランカラン・・・。
音が響いた。
やたは何かを言おうとして―やめた。
俺の顔をちょっと見て、微かに笑っただけだった。
俺もそれ以上、聞かなかった。
<***>
その後、忘れずにチェックポイント1まで戻ってきて、お昼ご飯&買い物。
お昼は麺処できつねうどんを食べた。
やたはざる蕎麦(そば)、宮井は月見うどん、金下は山菜蕎麦。
意外と渋い。
後は久我さんと柏原さん用のお土産を買う。
おせんべい。
なんやかんやでわいわいと。
楽しい時間は終わって、またバスに乗る。
次はホテルだ。
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