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ここのオムライスは昔ながらのケチャップライスだ。小さく刻んだ玉ねぎと鶏肉が入っていて、ふわふわのトロける卵が絶品。プレートの中には、山盛りのサラダに俵形になったジャガイモコロッケと、ニンニクの香りが食欲をそそる醤油で味付けられた唐揚げが添えられており、お口直しのピクルスが彩りよく乗っている。黒胡椒がピリッと効いたコンソメスープがカップで出てきて、大満足のボリュームだ。
注文したオムライスが出てくるまでの間、いろんなことを聞いた。
長崎県出身で、血液型はA型。地元の大学で先生になりたくて教育学部に通ったものの、いざ卒業して教師になったが、性格的に内向的な為、どうしても上手く話せない上、周りの先輩教諭達とも上手くいかず、志半ばで諦めたこと。
こっちで就職したのは、叔父が司法書士をしていたから。その叔父が暇なら事務所を手伝ってほしいと言ってくれて、逃げ出すように出てきたという。
確かに喋るのは得意ではないかもしれないが、優しい性格が先輩教諭達には気弱に映ったのではないだろうか。
恐らく、一人一人の生徒に親身になって接することの出来る稀有な教師になっていただろうに。
語られる話に相槌を打ちながら、彼はきっと寂しいんだと思った。そして、教師を諦めた自分を、否定するのではなく、受け止めてくれる人を探していたのだと思う。静かに語られるその内容は、切ないものだったが、もっと聞いていたいと思った。
「・・・ごめんなさい、こんな話。つまらない話でした。」
心の整理がついていないのか、寂しげに瞬きを繰り返す目元を見ていたら、気づいたときには彼の頬を両手で包み込んでいた。
「つまらなくなんて、ありませんよ。話してくれて、ありがとう。」
柔らかな頬を温めるようにそっと撫でる。
「・・・あ。あり、がとうございます。」
真っ赤になって俯く彼の事が、とても。とても。
ああ、好きだ・・・と思った。
静かに手を離し、にっこりと微笑んで、1つ提案する。
「良かったら、また、食事にお誘いしても良いでしょうか。杉さんの話をもっと聞きたい。」
彼の口調にあわせて、あえて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
顔を上げて「はい」と笑顔で返してくれた時、俺はここ数年で感じた事の無い幸せを感じていた。
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