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風見さんは、優しい。おれのことを友だちだと言ってくれた。
都会にでてきて、はじめての、友だち。アドレスの交換をした。
風見さんのホームが黒猫で、飼っているのかと聞いたら、実家で飼っていて、拾ったのは高校生の時なんだという。
子猫がひとりで鳴いていて、木陰から親が出てくるのを2時間くらい待っていたが現れず、だんだんと元気を失う様子を見て、耐えられずに連れて帰ったらしい。
「ただね。」
風見さんは悪戯が見つかった子どもみたいな顔をして続ける。
「ただね、あまりにも小さすぎて、哺乳瓶でミルクをあげないといけないくらいだったんだ。だからね、次の日から2週間くらい、こっそり学校に連れて行って、仲の良かった用務員さんの部屋に置いてもらって、休み時間のたびにミルクやら、トイレやら、いろいろお世話することになったんだ。楽しかったんだけど、辛かった。これが俺の初めての子育て体験。」
今思えば、無茶やったよなー。
にこにことそう続ける風見さんが、ますます好きになる。
「や、優しいんですね。」
風見さんを見上げると、ハハッと照れたように笑ってくれた。
「こら、小夜。敬語は無しってば。」
ピンっと軽くデコピンされる。
おれは恥ずかしくなって弾かれたおでこをさすりながら、うん、と頷いた。
長居してもいけないからと、洋食屋さんを出て(お金を出すと言ったら猛烈に拒否された)、気が済まないからと言ったら、じゃ、次のコーヒー奢ってと頭を撫でられた。
ちょっと嬉しいのは、何でだろう。
このまま帰っても、誰もいない部屋に一人きり。
人恋しいのか、このまま帰りたくなかった。
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