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ズルズルズルズル・・・
風見さんと別れてから、扉に背をあずけて、そのまま玄関にしゃがみ込んだ。
・・・今日は、凄い日だった。
ふー・・・溜め込んでいた息を吐き出す。
何で、こんな事になったんだっけ。
緑色のパスケースが繋いだ今日の出会い。ご飯行って、お茶して、家まで送ってもらった。
「デートコースみたい・・・。」
頭をたくさん撫でてもらった。ずっと寂しくて辛かった心が癒された。お喋りが下手な自分の話を聞いてくれて、風見さんの事もたくさん知った。
毎日まいにち辛くて、後悔の気持ちに息ができなくなりそうなひとりの時間が、もしかすると明日、電車の中で会えるかも知れないとか駅でばったりとか、ちょっとそんな事を考えると、ふわりと浮上していくのが分かった。
ごはん、美味しかったな・・・。
風見さんの会社の裏手の洋食屋さんは、風見さんのお気に入りだと言っていた。久しぶりに誰かと一緒に食べる食事は、すごく美味しかった。
はじめて会った人と、いろんな話をした。
風見さんの実家は神奈川にあるらしい。頑張れば会社まで通えなくもないけど、実家には、出産のために戻ってきた妹さんが産後もそのまま住んでいるのだそうで、騒がしくて一人暮らしを始めたんだそうだ。旦那様は転勤で離れているため、もう少し大きくなってから引っ越すらしい。まだ赤ちゃんの姪っ子は可愛いらしいが、土日が妹さんの用事で全部潰れると笑っていた。
「あいつ、俺の事を召使いだと思ってるに違いないんだ。」
そう言った風見さんの顔は優しくて、妹さんの事も愛してるんだなと伺えた。
今日、たくさん話したけど、もっともっと風見さんの事を知りたい。
なんだか職場に行く事が楽しみになってきた。
「・・・ふふ、魔法使いみたい。」
なんだか依存してしまいそうだった。
おれのこと、弟みたいに思ってくれてるのかな。きっと、彼女とかいるんだろうなぁ。
そう考えた瞬間、胸がチリっと痛んだ。
「・・・考えるの、やめよ。」
痛んだ胸をひと撫でしてから立ち上がる。
とにかく、寝る準備をしなければ。明日、もし会えた時に寝坊してボサボサのヘロヘロ状態では格好悪いもんね。
風見さんと、明日も会いたいなぁ。
部屋にあがり、窓を開け放つ。頭の中がすっかり風見さん一色に染まっている事に自覚はなかった。
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