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中に入ると、圧倒的なスケールだった。風見さんが言ってたみたいに、おれたちの席は舞台の高さからいくと、雲の上に匹敵するんじゃないかと思うくらい、上の上の上の4階席で、そのフカフカの椅子が配置された席の面は、急勾配な斜面になっている。一歩階段を踏み間違えたら、ゴロンゴロンと落ちていきそうな(しかも、4階席って横から見たらリーゼントみたいに張り出してるところだから、手すりを超えたら空中だ)ところで、高所恐怖症っていうわけではないけど、なんだかお尻がムズムズするような、変な恐怖感を覚えた。
「ほら、小夜。掘りごたつになってるところがあるだろ?あそこ、17000円の席。それからねぇ。」
人生勉強って言ってただけあって、風見さんも初めての歌舞伎なのに、席の値段うぃ把握済みって・・・たぶん、相当調べてくれたんだと思う。
風見さん、おれのためにこんな調べてくれて、準備してくれて。感謝しても感謝しきれない。どうやってお返ししたら良いんだろう。
リュックの中には、さっきのお店でこっそり買った、組紐のストラップが入っている。
色違いの、お揃いだ。
今日のふたりの思い出に、と思って買ったけど、これって気持ちが重かったりするのかな?
風見さんがトイレに行った隙に、思い切って買ってはみたけれど、今更ながらに考えてしまう。
重いかな。気に入って貰えなかったらどうしよう。
喜んでもらえるかな。うーん、うーん。
「・・・でね、あとで行ってみようね。」
ハッ!!風見さんの話、聞いてなかった。
曖昧に笑ったところで、開演の拍子木の音が響いた。
どうしよう。今更、聞けなくなってしまった。
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