アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
49
-
予約をしていたイタリアンレストラン。
暑いのはわかっていたけれど、どうしても東京タワーが目の前に輝くテラス席に連れて行ってあげたかった。
地元を逃げ出すように出てきて、こっちへ来たものの、俺と同じで閉塞感のある毎日を送っていた、小夜。久しぶりに話をしたと笑ったこの子は、優しくて不器用な、俺の天使だ。
俺を心を救ってくれたように、小夜の心も救ってあげたくて、東京での「幸せの象徴」として思い出してもらいたいと思って考えたのが、このレストランでの食事だった。
小夜が幸せになってくれれば・・・幸せだと感じてもらえれば良かった。
その上で、小夜が少しでも俺の事を好きだと思ってくれれば、俺は幸せだ。
目を閉じさせて、移動する。タクシーには、お店の前ギリギリで止まってもらった。
小夜を抱きしめるようにして、一歩ずつ進んでいく。
お店には事前に、サプライズで連れていくから、何も言わずにテラス席まで連れて行くと伝えていた。
お店の入り口で、店員へ無言で合図をする。
中にいたスタッフは一度頷いた後、静かにテラスへ誘導し、店内へと静かに戻って行ってくれた。
ここには、俺と小夜のふたりだけだ。
小さく震える小夜が愛しくて、思わず耳にキスをした。
ビクっと震えて目を開けた小夜の瞳に、東京タワーのオレンジの光が映る。キラキラと輝いて、本当に綺麗だと思った。
「あ・・・き、れい・・・。」
小夜が俺を見上げた。
テラス席のテーブル全てに置かれた、キャンドルの炎がユラユラと揺れている。
「か、ざみ、さん・・・おれ・・・。」
「小夜・・・」
小さな唇が震えながら、俺の名前を呼ぶ。
愛しくて堪らなくなって、思わずギュッと肩を抱きしめた。
なんだか、想いが溢れて泣きそうだ。
「・・・おれ・・・っ」
小夜、勘違いしても良いか?
お前も、好きだと思ってくれているのか?
心臓の音がうるさい。
そのくせ、小夜の吐息さえ聴き逃すまいと、耳が痛いくらい敏感になって、さっきからキーンという音が消えない。
小夜の震える唇に指を這わせる。
「小夜・・・?」
小夜が、頷く。
「小夜・・・いいの?」
「・・・うん。」
小夜の瞳が閉じられる。そっと頬を両手で包んで、キスをした。
唇を離し、その小さな頭を抱いた。
「小夜・・・、好きなんだ。俺のものになって欲しい。」
一世一代の告白。こんなに真剣に、人を好きになったことは初めてだった。
「おっ・・・おれもっ・・・おれも、風見さんが好き。」
ギュッと背中を抱き締め返されて、幸せすぎて涙が出そうになる。
知らず、声が震えた。
「・・・ありがとう、小夜。」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
49 / 1523