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小夜がすぅっと眠りに落ちた。
俺は起こさないようにゆっくりと起き上がり、後始末をした。煌々と照らされた灯りのもとで寝息を立てる小夜は、小さく、儚い。
手を洗い、給湯器のスイッチを入れる。部屋に戻り、ズボンのポケットからタオルハンカチを取り出すと温度を調節しながらおしぼりを作り小夜の下腹部を拭っていく。
欲望に負けてしまった俺は、何と意思の弱いことか。事後の始末をしながら嘆息した。
綺麗にしたところで、ハンカチを置きにキッチンへ行き、もどってからクシャクシャに丸まったジーンズと下着を拾う。流石にジーンズを履かせると起こしてしまうから、下着だけをゆっくりと履かせてタオルケットをかけた。
雄の匂いのこもった空気を入れ替えるために、窓を開けた。
新聞配達の原付バイクの音がする。世界は夜が明け、朝を迎えようとしていた。
・・・ため息をついた。
こんな風に襲うつもりは無かったのに。夢でも小夜を求めてしまうくらい、小夜のことしか考えられなくなっている。
窓をしめて、小さなテーブルの前に座り込む。2つのマグカップが並ぶそのテーブルには、貰ったばかりの組紐のストラップが付いた鍵の束。持ち上げて組紐を握りしめた。
「後で知ったんだけどね、組紐って縁を結ぶって言う意味があったらしくて・・・へへ、成就しちゃった。」
そういって笑った小夜は、とても綺麗で、とても幸せそうで。
「おれね・・・けいけん、ないから。」
そう、小さな小さな声で告白してくれた小夜へは、怖がらせないように少しずつ少しずつ先に進めていこうと思っていた。
なのに。
「俺、ダメだな・・・。」
ここまで落ち込むのは久しぶりだ。大人になってからは、初めてだと思う。
好きだからこそ、触れたいし抱きしめたい。好きだからこそ、大事にしたい。
そして。
好きだからこそ、嫌われる事が心底怖い。
体が欲しいわけじゃない。心も体も欲しいのだ。
小夜が俺の全てであるように、小夜も俺が全てであって欲しい。
財布を持って、外に出る。
夜と朝が混じり合うこの時間の空気はピンと張りつめ、背筋が伸びる気がした。
さあ、小夜が起きる前に小夜が好きそうな朝メシを買おう。
俺に振り回されて疲れた小夜を、少しでも休ませたい気持ちと、謝罪を込めて。
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