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188 2018年9月8日
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みこちゃんの母親が帰ってきたのは、明け方5時だった。お酒の匂いのする彼女は、スナックで働いていると説明した。
「美湖を返して下さい。」
硬い表情で言われた。
「少なくとも、あの部屋には帰せません。食事もまともに採らせていない。俺たちは、児童相談所に相談しようと思っています。」
「何の権利があって、私からあの子を取り上げるの?」
涙の浮かんだ目で睨みつけられる。
「取り上げるとは言っていません。みこちゃんが子どもらしくスクスクと成長できる環境であれば、そもそも相談はしないんです。」
「私だって!!私だって、ちゃんとしたいわよ!」
そう言って泣き出した。
親子3人で仲良く暮らしていたのだという。だが、ある日浮気が判明した父親を責めたところ帰って来なくなり、専業主婦をしていた彼女は生活費を稼ぐために夜の仕事を始めたという。
慣れない夜の生活に体がついていかず、きちんとしなけばと思いつつも、昼間はどうしても酒が残っているため動けなくて寝てしまうという理由だった。想像でしかないが、無気力になっている状況から、軽い鬱も入っているのかもしれない。
また、子どもを置いて昼間に出掛ける理由は、ご主人を探しているからなのだそうだ。
「理由はわかりました。ですがあの部屋は酷すぎます。あんなところに みこちゃんを置いておくわけにはいかない。そして、きちんとした食生活をさせないといけない。」
「・・・通報、するの?」
手で顔を覆い、俯く彼女に小夜が言った。
「少なくとも、今の状況のままでしたら。改善を約束してくださいますか?」
「私には、美湖しかいないの・・・頑張るわ。」
か細く息を吐く彼女の肩を小夜がさすった。
「まずは片付けましょう?子どもが清潔な部屋で生活出来るまで、うちでお預かりします。幼稚園への送り迎えはお願いしてもいいですか?」
「・・・。」
小夜が口を挟んだ。
「お母さんも、一緒にうちで食事をしてください。お仕事に向かわれる夕方はご一緒できないでしょうが、朝ご飯は一緒に食べれますよね。」
「はい。でも・・・。」
「みこちゃんのためなんです。」
小夜に頷くと、俺から話した。
「お母さんのご不安はわかります。大人の男性が住む家に置いて良いのかとお考えですよね。」
「はい・・・。」
小夜と目を合わせて頷いた。
「俺たちは性別は男ですが、恋人としてここに住んでいます。もちろん、幼児趣味はありません。お互いに愛し合い同棲生活を送っています。」
「・・・。」
じっと俺たちを真っ直ぐに見つめる母親の目は、娘を預けていいのかと真剣だった。
それをみて、安心した。みこちゃんの事を愛していることは間違いないと確信したからだ。
俺は言い聞かせるように、優しく言った。
「お母さん、確かに男同士ですから、お嬢さんの情操教育的には良くないかもしれません。ですから、早く迎えに来れるように頑張ってください。お母さんが仕事に行っている間、俺たちが責任もってお預かりします。生活を立て直すまでの手助けをします。」
母親は、しばらくジッと俺たちを見つめた後、「ありがとうございます。」と言って泣き崩れた。
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