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「え?」
「・・・風見さん。」
会えたら良いなと思っていた風見さんに会えて、飛び跳ねたくなるほど嬉しい気持ちと、堪らなく気恥ずかしい感じで顔を覆いたくなるような、そんなごっちゃな気持ちになった。
「あら、お知り合い?」
「はい。」
風見さんが石田さんと会話しながら、おれを見つめている。
「社食に案内しても?」
「ええ、そこならいいんじゃないかしら。警備に伝えておくわね。」
「じゃ、これ。」
ポンと石田さんに書類を渡すと「杉さん、こちらへどうぞ。」とエレベーターに乗せられた。
------------※ ※ ※------------
「小夜、びっくりした!」
「おれもっ!」
ふふ、と笑って見つめ合う。
「石田にお遣い?」
「そう、書類届けてた。風見さんも?」
「そうそう。まさか社内で会えるとは思わなかったな。」
チンと音がしてエレベーターが開いた。
そこは広々とした空間が広がっていた。
「か、カラフル・・・。凄ッ。」
「ここ、社員食堂。」
小さめの白のテーブルに、赤やオレンジ、グリーンやイエローの椅子をセットされたものが、あちこちに配置されている。窓側にはひとりで食べる人用のカウンター式のテーブルが配置されていた。
奥にはコンビニと、料理を提供するためのキッチンカウンターが見える。
ちょっと待ってて、と言われ風見さんがコンビニへ消えて行った。
その間に、社会科見学だ。キョロキョロと辺りを見回し、窓辺に行ってみた。随分上の階に来ていたようで、とてもいい景色だ。
「小夜、どうぞ。」
振り返ると笑顔の風見さんが立っていた。
手で指し示された席に座ると、コーヒーを出してくれた。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
向かいの席に座った風見さんは、眩しそうに目を眇めた。
「ラッキーだったな、気分転換に書類を持って行って良かったよ。」
本当は、書類をスキャンして提出したあと、社内宛の封筒に入れて所定のボックスに放り込んでおけば、シッピングサービスの人が回収に来て、郵便配達のように運んでくれるのだそうだ。
「ふふ、風見さんに会えて良かった。逢いたいな、逢えたらいいのになって思いながら来たんだよ。」
そういいながら、コーヒーのボトル缶の蓋を回し開けた。
「でも風見さん、凄いところに働いてるんだね!びっくりしちゃった!」
「あぁ、エントランスと7階は見た目重視になってるだけだよ。」
7階は会議室、打合せ室がたくさんある階で来客者との対応は7階というルールがあると説明してくれた。
「あ、じゃあココっておれのことバレたらマズイ?」
「大丈夫だよ、石田が警備に連絡してくれたし、俺の・・・だからね?」
言葉には出さなくても「恋人だから」と言ってくれたのがわかる。有頂天になりそうだった。
「ここはね予約さえしておけば、夜は社員専用のバーとして利用も出来るんだよ。実際は入社当初に行き過ぎて、飽きてしまうから年長組は行かなくなるんだけど。」
「ふふ、飽きるほど行ったの?」
「激安なんだよ。アルコールが一杯300円って、金のない新入社員にとっては天国だろ?」
「すご〜い!」
「で、結果飽きるんだ。」
ブフッ。
「コンビニも入ってるって、びっくりしちゃった。」
「凄いぞ?夜7時に閉店するからな?」
「アハハッ!24時間あけてても意味ないもんね?」
「そのとおり。」
風見さんのことをたくさん知れて嬉しい。楽しくて仕方なかった。
「あ。そういえばね、石田さんが変な反応したんだ。おれ、何かしたのかと思って。」
「変?」
「そう。あのね・・・。」
さっきのサインをもらう時に感じた違和感を伝えていく。
「別に嫌な顔をされたとか、そういうのじゃないんだけど。なんか、気になって。」
「ふぅん・・・。」
社食に連れてきた小夜は、目をキラキラさせて見上げてくる。
その子どものような反応が可愛い。
その顔が急に曇った。
「なんか、気になって。」
「ふぅん。・・・小夜、差し出したボールペンみせて?」
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