アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
216
-
仕事が終わり、駅の近くのカフェで、小夜は風見を待っていた。風見と初めて行ったカフェだ。
あの時は素敵なお兄さんで、もっとお話したいって。
仲良くなりたいって、そう思ってた。
今は大切な恋人で、心から愛していて。
そして今日は、一緒にふたりで帰るために待ち合わせをしている。
陽が落ちても暑かったあの夏の空気も、今では涼しい風が吹いて秋を感じさせた。
あの日アイスティーだった飲み物は、今日は暖かい紅茶だ。
ポットに入った紅茶を淹れて、時間を確認した。
・・・そろそろ風見さんの仕事も終わる。
緊張して鼓動が早くなった。
落ち着け、と暗示をかけながら、小夜はゆっくりと目を閉じた。
------------※ ※ ※------------
「さ・・・。」
声を掛けようとして、とどまった。目を閉じて、携帯を持つ小夜の横顔があまりにも儚くて、声をかけたら消えてなくなりそうだったからだ。
静かに移動して、目の前のソファー席に座った。
と、小夜が気配を感じたのかゆっくりと目を開いた。
「ふふ、風見さん。」
「・・・小夜。ただいま。」
「うん、おかえり。」
花が咲いたように笑う。その度に、俺の心は、毎回鷲掴みにされた。
「・・・出れる?」
「うん。」
トレーを持って返しにいく。俺の鞄は小夜が持って。
あの時と同じ。だけど、あの時とは違う立ち位置。
「さ、帰ろう。俺たちの家に。」
ふたりで見つめ合ってから、駅へと歩き出した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
216 / 1523