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230 2019年9月16日 風見の実家へ
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緊張する・・・。
「かざ・・・暁さん、おれ変な格好してないよね?」
妹さん夫婦と会うために、風見さんの実家へ向かっている。もうすぐ到着すると言われたので、お願いしてコンビニに寄ってもらった。
トイレに入って、髪や歯のチェックをした。
それでも不安で仕方がない。
急に、こんなラフな格好で良かったのか不安になって、車の中で風見さんに確認した。
わたわたしているおれを見て、可笑しそうに笑っている風見さんは余裕そのものだ。
「大丈夫、可愛いよ。」
途中で手土産も買った。
「ドキドキする・・・。」
「大丈夫だよ、小夜の方が年齢近いし、きっと仲良くなれるよ。」
------------※ ※ ※------------
「ただいま。」
風見さんの家は和風の二階建ての家だった。
家自体は古くなっているようだが、玄関は綺麗に掃き清められ、中に入ると良い匂いがした。
「おかえりー!」
奥から元気な女性の声が聞こえた。
次いでパタパタと足音がして、ひょこっと綺麗な女性が顔を出した。
「わぁ。はじめまして。小夜さん?!真一(しんいち)さんッ!小夜さんよー。」
「麗(うらら)、うるさい。小夜がびっくりするだろ?」
そう注意しながらも、風見さんは優しく笑っていた。
「小夜、妹の麗(うらら)。麗の旦那さんの真一(しんいち)さんと、子どもの雪(ゆき)だよ。で、こちらがお付き合いしている・・・。」
「杉小夜です。よろしくお願いします。」
互いに挨拶して、微笑みあった。
家の中に通される。
元気いっぱいな麗さんはとてもキュートだった。鼻筋の通ったところは風見さんと兄妹なのがわかる。真一さんは物静かな優しそうな人で、笑顔で迎え入れてくれた。
「小夜!手を洗うぞ。雪を抱っこしたい。」
風見さんから手を引かれて、洗面所に連れて行かれた。
しっかり爪の間も石鹸で洗うと、皆が集まるリビングに通された。
「雪ぃ、元気だったかー?」
「お兄ちゃん、元気に決まってるじゃない!私の子よ?」
けたけたと笑う麗さんは、周囲を笑顔にする不思議な魅力をもっている。
「小夜さん、良かったら娘を抱いてあげて下さい。」
真一さんが雪ちゃんを渡してくれた。
「わぁ・・・。可愛い。」
あったかくて、やわやわで、良い匂いがする。
「爪、ちっちゃい・・・可愛いですねぇ。」
「だろ?俺の姪だからな。」
ふふん、と胸を張る風見さんが可笑しい。
「次、俺な。」
と手を出されたので、慎重に渡した。
「真一さん、ありがとうございます。雪ちゃん、可愛い・・・。」
「いえ、雪も喜んでいますよ。」
「すみません、今日は。」
「いえ、もう麗が楽しみにしていて朝から大変でした。」
持ってきた手土産のプリンを麗さんに渡すと、大喜びしてくれた。
「兄がね、本気で好きになった人っていうからどうしても会いたくて。こんな綺麗で優しい人なら、納得だわ。仲良くして下さいね。」
「こ、こちらこそ!ありがとうございます。」
頭を下げると、麗さんは身を乗り出してきた。
「小夜さん、おいくつなんですか?私より若いかも!」
「麗、はしゃぎすぎだよ。小夜さんがびっくりされるから、まずは落ち着いて、コーヒーでも飲もう?」
真一さんのフォローがあり、矢継ぎ早の質問から、ちょっとだけ息をつけた。
昨日、風見さんが妙に怖がったの、少し分かったかも。
コーヒーとクッキー、そして「お持たせでごめんなさい」と買ってきたプリンを出してくれた。
ソファーに座るように言われて席を見ると、黒猫が丸くなって すやすやと寝ていた。
「あ、もしかして・・・。」
「そうだよ、小夜。拾った子。クロたんって言う名前だよ。」
風見さんが子育てした黒猫ちゃんと会えた。起こさないように、驚かせないように慎重に座る。
「クロたん、はじめまして・・・綺麗な子。」
「だろ?美人なんだ。もうすっかり歳をとってしまったけど、まだまだ元気だよな。」
風見さんが雪ちゃんをベビーベッドに寝かせて、おれの隣に座った。
「・・・改めて言うけど、一生添い遂げたいと思っている大事な人なんだ。真一さん、麗、小夜のことをよろしく頼みます。」
「お兄さん、頭をあげて下さい。素敵な方のようですし、こちらこそ末永くよろしくお願いします。」
風見さんと真一さんの会話に、おれは泣きそうになった。
震える声で、よろしくお願いしますと言って深々と頭を下げた。
「俺たちは味方ですよ。妻も俺も偏見は無いですし。小夜さんも胸を張って過ごしてください。」
「ありがとうございます。」
「お兄ちゃん、泣かせないでよッ。お兄ちゃんがそんな事言うなんて、感動しちゃってヤバイわ。」
おれは麗さんと顔を見合わせて、すんっと鼻をすすりながら微笑んだ。
「良かったね、お兄ちゃん。好きな人が出来て。」
「だな・・・この出逢いは奇跡だから、大事にするよ。」
そう言って、風見さんはおれの顔を覗き込んだ。
涙で濡れた目元を、親指で優しく拭ってくれた。
「・・・あっつぅーい!あー、熱い、熱い。」
麗さんがワザと手でパタパタ扇ぎ、揶揄(からか)ってきた。
ふふふ、と4人で笑いあう。
妹さん夫婦に仲を認めてもらったおれは、幸せな時間を過ごした。
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