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鞄に入れっぱなしの携帯がブルブルと震えた。画面を見ると風見さんからだった。
「もしもし、風見さんどうしたの?!」
『小夜、ごめん。仕事中に。』
今まで仕事中に電話があったことなんてない。
何か緊急の用事だろうと慌てて電話を取りながら、廊下に走った。
「ううん、大丈夫。どうしたの?」
『・・・昼メシ、まだだろ?一緒に食わないか?』
こんなこと、はじめてだ。
びっくりして反応が遅れた。
『あ。ごめん、仕事中に電話してこんな内容なんて迷惑だよな。忘れて。』
いつも通りの声だけど、いつもとは違う雰囲気に焦った。
「待って!切らないで。あの洋食屋さんで食べよう?12時になってから出るから、先に着いたら注文してもらってても良い?」
『ん。ありがと、小夜。じゃ、お昼に。』
そう言って切れた電話を、小夜は見つめた。
絶対、何かあったんだ・・・。
悪いことじゃなければ良いけれど。
時計を見ると、まだ11時だった。
早く逢って様子を確認したい。
気持ちは焦るけれど、時間が過ぎるのが遅くてヤキモキする。ようやく12時になった瞬間、小夜は事務所を駆け出したのだった。
------------※ ※ ※------------
「ごめん、お待たせ!」
ゼイゼイと荒い息を吐きながら、風見さんに駆け寄った。
「・・・走ってきたの?ごめん、俺のわがままで。」
「ううん、早く逢いたくて。」
あらかじめ取ってくれていた席に座るとすでに二人分のお水が用意されていた。
グラスにぴっちりと付いた汗に、風見さんは早めにお店に入ったことが見て取れた。
「かざ、暁さん、何かあったの?」
「ふふ、小夜は焦るとすぐ呼び方が戻るね。」
・・・話を逸らされた。
今は話したくないのかな。
「う、うん、なかなか抜けないね。」
「・・・ごめんね、急に声が聴きたくなって電話した。声を聴いたら逢いたくなった。」
「うん。」
「これで午後からも頑張れるよ。」
そう言って笑う風見さんは、なんだか苦しそうに見えた。
「・・・おれで役に立って良かった。」
ここが家なら抱きしめて何があったのか聞けるのに。
ここじゃ、何もしてあげられない。
「今日、遅くなるから。先にメシ食べててもらえる?」
「うん、わかった。」
ここで話せないということは、会社の事なんだろうと思う。誰が聞き耳を立てているか分からない場所で話すにはふさわしくない事なのだろう。
いま、おれと逢うことで少しでも風見さんに元気が戻るのなら、いくらでも事務所から走ってくる。
「いつでもお昼ご飯、呼んでね?」
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